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日本産甲殻類について綴っているブログです。ほとんどはマイナーな種類ですが...(汗)

ボチボチと更新して参ります。お付き合いのほど、ヨロシクお願いいたします。
月イチくらいでアクセスいただければ、少しはページが増えていると思います。

100ページ達成に伴い、書庫を増やしてブログ内を整理しようと思ったのですが...そしたら、リンクが壊れちゃったみたいですm(__)m。
こういったバグや、工事中のページも随時更新してまいります。

もしそういった不具合を見かけましたら、「リンク壊れてるヨ」って教えてください。



このページは気まぐれに記事内容を書き換えます(おことわり)

 

 

 

注)写真の無断転用はかたくお断りいたします。

アクセス状況(2024.3.13)

2024年4月13日に大きなアクセスがありました。

大概はあとで知るのですが(1ヶ月間くらいが表示されているので)、今回は気が付くのが早かったので、アクセス数の時間経過を確認できました。

20時をピークとして、アクセス数が正規分布しています。こういう推移はなんか珍しい気がします。

こういう突発的なアクセス数増加は、ふつう、ばっと増えて、しゅーって終息するものと思います。正規分布になるって、どゆこと?

季節来遊

「死滅回遊」という学術用語があります。

本来の生息域から逸脱してしまい、生存不能な海域に流れ着く現象のことをいうように思います。ざっくり。

英語ではabortive migrationと表現するようです。

 

よく似た言葉に「無効分散」という用語があります。これもほぼ同じような内容と思いますが、なんとなく「分散」というと不特定の方向への拡散、「回遊」だと方向性のある移動のような印象があります。

「無効分散」はunsuccessful dispersionと訳すのでしょうか?

 

あとできちんと調べて、記事、加筆修正いたします。

 

なお、これらの言葉があまりにもネガティブなので、魚類愛好家の界隈(?)では「季節来遊」という言葉を使うと聞きました。

ためしにググるとけっこうヒットするし、定義みたいなものも見られます。

 

と、ここまで書いて、デジャブみたので調べたら、過去2回もこのタイトルで記事かけでした。あとでまとめておきます。

 

某人気アニメの次シーズンのサブタイトルが「死滅回遊」らいしいので、先取しとうこと思ったまでです。

 

 

シダムシNEWS

このたび3種のシダムシが新種記載されました(Saitoら, 2024)。
シダムシというのはヒトデ類の体内に寄生する広義にはフジツボの仲間の甲殻類です。今回の報告で世界から39種が記載されたことになります。
いずれも紀伊半島周辺の漸深海帯から得られたヒトデから発見されています。形態的にもDNAからも既知種から区別されています(ただしDNAは既知5種しか知られていないようですが)。

ダンノシダムシDendrogaster danni Saito & Wakabayashi, 2024
宿主は和歌山県みなべ町沖水深100 mから採集されたアカモンヒトデNeoferdina japonica Oguro & Misaki, 1986。採集者はダンイチノスケさんという方で、学名と和名は採集者に献名されています。採集されたとき(2020年12月13日)はまだ小学生だったようです。

ヒメノシダムシDendrogaster tanabensis Saito & Wakabayashi, 2024
宿主は和歌山県田辺市地先沖200–300 mから採集されたヒメヒトデ属の1種Henricia sp.。学名は産地に、和名は宿主に由来するようです。tanabennsisとはなんと霊験あらたかな! 田辺は海洋生物研究のメッカで、この地名を冠した海洋生物はかなりいます(あとで調べますw)

カンムリシダムシDendrogaster jinshomaruae Saito & Wakabayashi, 2024
宿主は三重県熊野市・南伊勢町沖水深210–280 mから採集されたカンムリヒトデCoronaster volsellatus (Sladen, 1889)。学名の種小名は採集した漁船「甚昇丸」に、和名は宿主に由来するようです。
甚昇丸は採集者(著者の一人)である森滝さんが、『熊野灘漸深海帯生物調査』(森滝, 2020)で使われている漁船で、この調査で採集されて記載された新種は35種にのぼり、また船名を冠した深海生物はこれが3種目(マイナー種ばかりですが)とのことです。さすがは“新種ハンター”。
タイプ標本は、1つのパラタイプ以外、全て2021年3月24日に熊野市沖で採集された個体で、この時は84個体のヒトデを調査し(もっと多く採集されていたとのことですが)、このうち5個体からシダムシを発見。寄生率は6%となります。
1つのパラタイプは未成熟なメスで、水族館で2年間飼育して死亡したヒトデからみつかった個体です。カンムリヒトデからはじめてみつかったシダムシですが、未成熟個体とのことで、シダムシの成長がかなりゆっくりなのか、飼育中に寄生されたのか、だとしたらその経路はどうなっているのか、謎は深まるばかりです。

 

興味深いのはダンノシダムシとヒメノシダムシで、ヒトデ飼育中にヒトデの背中を突き破って水中に出現してきたというのです。採集者、とくにダン君は深海のヒトデの飼育を楽しんでいたでしょうから、かなりのショックをうけたのではないですかね? 同様にアカヒトデシダムシDendrogaster adhaerens Yoshimoto, Moritaki, Saito & Wakabayashi, 2020やユミヘリゴカクノシダムシD. tobasuii Saito Wakabayashi & Moritaki, 2020でもシダムシが宿主から出現する様子が観察されています。しかし、運動器官の無いシダムシがどうやって宿主の内壁を突き破るのか、ヒトデ体内でのみ生きられるシダムシがそこまでして海中に進出する行動が正常な生態なのか、飼育個体であるが故の異常行動なのか、こちらも謎です。なおこれまでにみられたこの行動をとったシダムシは皆体内にノープリウス幼生を持っていたとのこと。


●謎の集団 プロジェクトチーム“Shida-mushi”
この研究はプロジェクトチーム“Shida-mushi”によるものとのことです。このチーム名は2020年の論文でもみられます(Saitoら, 2020)。齋藤(2020)の図3にはGrygir博士(シダムシ研究のイキガミ様)とチーム“Shida-mushi”の記念写真が掲載されています。4人写っていて、左上がGrygir博士、右上が鳥羽水族館の森滝丈也さん(“新種ハンター”として各メディアに露出されてます)、右下の女性が若林香織さん、なので、左下が齋藤暢宏さんなのでしょう(この方はあまり見かけませんね)。Yoshimotoら(2020)の論文には明記されてませんが、著者と研究内容からして、このチームの研究なのでしょうね。齋藤(2020)でもシダムシ研究はこのチームの活動であることが記されていて、あらたに吉本明香里さんが国内9番目の種を記載中と紹介しています。
今回の論文で国内のシダムシが13種知られたことになりましたが、このうち7種はチーム“Shida-mushi”の活動によるものとなります。実に54%! とはいえ国内からは254種ものヒトデが知られているので(木暮, 2018)、探せばまだまだシダムシみつかりますね。ガンバレ!チーム“Shida-mushi”!

 

<論文>
木暮陽一,2018.日本近海産ヒトデ類(棘皮動物門ヒトデ綱)種名目録.日本生物地理学会会報, 73: 70–86.

森滝丈也,2020.熊野灘漸深海帯の無脊椎動物における水族館と研究者の連携.タクサ, 48: 34–40.

齋藤暢宏.2020.実録! シダムシの研究 ~続・アマチュア研究者新種記載顛末記~Cancer, 29, e142–e146.

Saito, N., Moritaki, T., Minakata K., & Wakabayashi, K., 2024. Three new species of sea star parasite Dendrogaster (Crustacea: Thecostraca) from Japan. Zootaxa 5405 (4): 577–590.

Saito, N., Wakabayashi, K., & Moritaki, T., 2020. Three new species of Dendrogaster (Crustacea: Ascothoracida) infecting goniasterid sea-stars (Echinodermata: Asteroidea) from Japan. Species Diversity, 25(1): 75–87.

Yoshimoto, A., Moritaki, T., Saito, N., & Wakabayashi, K., 2020. A new species of Dendrogaster Knipowitsch, 1890 (Thecostraca: Ascothoracida: Dendrogasteridae) parasitic in the sea star Certonardoa semiregularis (Müller & Troschel, 1842) (Echinodermata: Asteroidea) from Japan. Journal of Crustacean Biology, 40(6): 795–807.

ウオノエ類の和名 ~山内(2016)以降

山内(2016)では日本産ウオノエ類がとりまとめられ、34種のウオノエ類中、15種に和名が新称(あるいは改称)されています。

 

魚類寄生虫であるウオノエ科等脚類は、その後も新発見がつづき、国内の発見については、報告の都度新和名が与えられているようです。ウオノエ研究のデフォルトですかね?

Nob!!もウオノエ類は大好きで、フォローしきれていない所あるかもですが、山内(2016)以降の情報を拾っておこうと思います。

 

  • トリカジカエラモグリElthusa moritakii Saito & Yamauchi, 2016

 出典:Saito & Yamauchi (2016)

 宿主:トリカジカEreunias grallator Jordan & Snyder, 1901の鰓腔

 分布:駿河湾熊野灘東シナ海

 備考:魚類研究者の間では、以前から割と普通にしられていたとのこと

 関連サイト:https://nobnob.hatenablog.jp/entry/35491957

  • トビウオノコバン Nerocila trichiura (Miers, 1878)

 出典:Nagasawa & Isozaki (2019)

 宿主:ホソトビウオCypselurus hiraii Abe, 1953(Nagasawa & Isozaki, 2019)とツクシトビウオCheilopogon doederleinii (Steindachner, 1887)(Nagasawa, 2020)の体腹面

 分布:三重県南伊勢

 備考:本邦産3種目のウオノコバン属

  • オオウオノエElthusa splendida (Sadowsky & Moreira, 1981)

 出典:Kawanishi & Ohashi (2020)

 宿主:トガリツノザメSqualus japonicus Ishikawa, 1908の口の中

 分布:東シナ海

 備考:ブラジル南部の大西洋から一度だけ報告されていた種。SNSなどみていると、かなり広範囲のサメ類から普通にみつかっている

 関連サイト:https://www.hokudai.ac.jp/news/2020/11/2-44.html

  • サンカクオウオノエNorileca aff. triangulata

 出典:Nagasawa (2021a)

 宿主:バショウトビウオParexocoetus mento (Valenciennes, 1847)の鰓腔

 分布:宮崎県

 備考:Nagasawa (2021a)の個体はNorileca triangulata (Richardson, 1910)に似るが、第1触角の節数、第1・第2胸脚前節に小刺に違いがあり、種同定にいたっていない。なおN. triangulataはインド-西太平洋の熱帯域に広く分布し、日本の個体が本種であれば、分布北限になるとのこと。是非種同定に結論がでることを期待!

  • フグノクチヤドリCinusa nippon Nagasawa, 2021

 出典:Nagasawa (2021b)

 宿主:ショウサイフグTakifugu snyderi(Abe, 1988)、ヒガンフグT. pardalis(Temminck & Schlegel, 1850)と、コモンフグT. flavipterus Matsuura, 2017

 分布:山口県下関市室津下沖(日本海)(Nagasawa, 2021)、千葉県房総半島地先および三重県志摩半島沖(太平洋岸)(藤田ら, 2023)

 備考:マンカ、幼体がDNA分析によって同定されている(藤田ら, 2023)

 関連サイト:https://nobnob.hatenablog.jp/entry/2023/06/18/191916

  • リュウノロクブンギMothocya kaorui Kawanishi, Miyazaki & Satoh, 2023

 出典:Kawanishiら(2023)

 宿主:ヒメダツPlatybelone argalus platyura (Bennett, 1832)

 分布:伊豆諸島ベヨネース列岩および八丈島

 備考:かなり特異な体形をしているが、DNA分析によってエラヌシ属の所属と位置づけ

 関連サイト:https://www.ees.hokudai.ac.jp/?p=5739

  • ウオノノドボトケAnilocra harazakii Uyeno & Tosuji, 2023

 出典:Uyeno & Tosuji (2023)

 宿主:ニセタカサゴPterocaesio marri Schultz, 1953の体前部腹面(ノドのあたり)に寄生

 分布:鹿児島県の屋久島や三島村海域

 備考:本邦3種目のウオノギンカ属。寄生部位は本属といては特異。沖縄、奄美、鹿児島本土沿岸からは見つかっておらず、地域固有性が高い種とみられている

 関連サイト:https://www.kagoshima-u.ac.jp/topics/2023/04/post-2056.html

  • ミナミウオノエCymothoa indica Schioedte & Meinert, 1884

 出典:Fujita (2023)

 宿主:ヤクシマイワシAtherinomorus lacunosus (Forster 1801)の口腔

 分布:沖縄県(Fujita, 2023)

 備考:既報はMartinら(2016)にまとめられている(文献未収集)

 関連サイト:https://nobnob.hatenablog.jp/entry/2023/09/05/133841

 出典:Fujita (2023)

 宿主:オキザヨリTylosurus crocodilus crocodilus (Péron & Lesueur 1821)の鰓腔

 分布:宮崎県(Nagasawa, 2017)、沖縄県(Fujita, 2023)

 備考:本邦からの初記録はNagasawa(2017)による。ケニアからハワイにいたるインド-西太平洋に広く分布する(Bruce, 1986)

 関連サイト:https://nobnob.hatenablog.jp/entry/2023/09/05/133841

 

 

ということは、日本産ウオノエ類は42種ですかね? サヨリヤドリムシMothocya sajori Bruce, 1986がブリエラヌシMothocya parvostis Bruce, 1986のシノニムになってるから(Fujitaら, 2023)。

 

このページは新和名提唱されるたび加筆していきます。

当然見落としや間違いあったら、修正しますので、気が付いた人、どんどんお知らせください。皆さんでより良いページを作っていきましょう(調子よすぎ 笑)

 

 

 

引用文献

Bruce, N. L., 1986. Revision of the isopod crustacean genus Mothocya Costa in Hope, 1851 (Cymothoidae: Flabellifera), parasitic on marine fishes. Journal of Natural History, 20: 1089–1192.

Fujita, H., 2023. Morphological and molecular study of the fish parasitic crustaceans Cymothoa indica and Mothocya collettei (Isopoda: Cymothoidae), with new distribution records. Diversity, 15, 969.

Fujita, H., Aneesh, P. T., Kawai, K., Kitamura, S.-I., Shimomura, M., Umino, T., & Ohtsuka, S., 2023. Redescription and molecular characterization of Mothocya parvostis Bruce, 1986 (Crustacea: Isopoda: Cymothoidae) parasitic on Japanese halfbeak, Hyporhamphus sajori (Temminck & Schlegel, 1846) (Hemiramphidae) with Mothocya sajori Bruce, 1986 placed into synonymy. Zootaxa, 5277 (2): 259–286.

藤田大樹・齋藤暢宏・奥野淳兒・森滝丈也・山内健生,2023.魚類寄生性甲殻類フグノクチヤドリ(等脚目:ウオノエ科)の追加記録とマンカの形態.日本応用動物昆虫学会誌, 67(2): 37–45.

Kawanishi, R., & Ohashi, S., 2020. First record of the rare parasitic isopod Elthusa splendida (Cymothoidae) from the Pacific Ocean, based on a specimen found in a museum shark collection. Species Diversiy, 25(2): 343–348.

Kawanishi, R., Miyazaki, Y., & Satoh, T. P., 2023. Mothocya kaorui n. sp. (Crustacea: Isopoda: Cymothoidae), a fish-parasitic isopod with unique antennules from the Izu Islands, Japan. Systematic Parasitology., available online at https://doi.org/10.1007/s11230-023-10083-7

Martin, M.B., Bruce, N.L., Nowak, B.F., 2016. Review of the fish-parasitic genus Cymothoa Fabricius, 1793 (Crustacea: Isopoda: Cymothoidae) from Australia. Zootaxa, 4119, 1–72.

Nagasawa, K., 2017. Mothocya collettei Bruce, 1986 (Isopoda, Cymothoidae), a marine fish parasite new to Japan. Crustaceana, 90: 613-616.

Nagasawa, K., 2020. New host and third western Pacific Ocean records for Nerocila trichiura (Isopoda: Cymothoidae), a skin parasite of flyingfishes. Crustacean Research, 49: 221–223.

Nagasawa, K., 2021a. Norileca aff. triangulata (Isopoda: Cymothoidae), a branchial cavity parasite of the African sailfin flyingfish, Parexocoetus mento (Beloniformes: Exocoetidae), from southern Japan, with a new Japanese record of the isopod genus. Crustacean Research, 50: 55–64.

Nagasawa, K., 2021b. Cinusa nippon n. sp. (Isopoda: Cymothoidae) parasitic in the buccal cavity of coastal puffers (Tetraodontiformes: Tetraodontidae) from Japan, with the first specimen-based record of the isopod genus from the Pacific region. Zoological Science, 38: 359–369.

Nagasawa, K., & Isozaki, S., 2019. New record of a marine fish parasite Nerocila trichiura (Crustacea: Isopoda: Cymothoidae) from Japan, with its confirmed distribution in the western North Pacific Ocean. Species Diversity, 24: 195–201.

Saito, N., & Yamauchi, T., 2016. Anew species and new host records of the genus Elthusa (Crustacea: Isopoda: Cymothoidae) from Japan. Crustacean Research, 45: 59–67.

Uyeno, D., & Tosuji, H., 2023. Two new species of the genus Anilocra Leach, 1818 (Isopoda: Cymothoidae) parasitic on reef fishes from the western Pacific. Parasitology International, 95 (2023) 102752: 1–12. https://doi.org/10.1016/j.parint.2023.102752

山内健生,2016.日本産魚類に寄生するウオノエ科等脚類.Cancer, 25: 113–119.