ヤドリムシの仔

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この写真、ヤドリムシ類のクリプトニスクス幼生と思います。体長は1.45mmです。
北太平洋岸の沖合いのプランクトンサンプルでは極普通にみられます。また、東京湾東シナ海プランクトン中からも見られます。(同じ種類ではありません。ヤドリムシの幼生がみられるって意味です)
 
エビヤドリムシ類の生活史初期は、まずエピカリディア期epicaridiumとして親を離れて浮遊生活を行い、この時期に浮遊性カイアシ類のような小型甲殻類を中間宿主として寄生生活をはじめ、ミクロニスクス期micronisciumとなります。後にクリプトニスクス期cryptonisciumとなって中間宿主を離れ、エビ類などの終宿主にたどり着き成体へと成長することが知られています。エピカリディア期には胸脚は6対ですが、ミクロニスクス期になると7対になります。
ほとんどの種類で生活史が未解明のため、プランクトンとして採集されるヤドリムシ類の幼生が、何という種類かは分かりませんが、プランクトンを調査していると、ごく普通に見られます。
 
中間宿主として、浮遊性カイアシ類がしられています。日本でも8種のカイアシ類がミクロニスクス期の宿主として報告されています(Uye & Murase, 1998;大塚ほか, 2000)。このうちCalanus sinicusへの寄生状況が瀬戸内海で調査されています。寄生率は0.6%だったそうです。
 
Probopyrus属ヤドリムシ類3種の飼育実検によれば(Dale & Anderson, 1982)、エピカリディア期の宿主特異性は高く、浮遊性カイアシ類中Acartia tonsaにのみ寄生がみられたそうです(このほか6種のカイアシ類が生息する環境だそうです)。
エピカリディア期は寄生後34日後にミクロニスクス期となり、更に34日後にクリプトニスクス期へと成長したそうです(エピカリディア期の中間宿主への寄生からクリプトニスクス期への変態まで、46日間かかったということ)。この成長期間はProbopyrus3種とも同じだそうです。
 
 
 
 
 
[参考文献]
Dale, W. E. & Anderson, G.  1982.  Composition of morphologies of Probopyrus bithynis, P. floridensis, and P. pandalicola larvae reared in clture (Isopoda, Epicaridea).  Journal of Crustacean Biology 2: 392-409. 
Sadro, S.  2001.  Arthropoda: Isopoda.  In: An Identification Guide to the Larval Marine Invertebrates of the Pacific Northwest, Shanks, A. L. (Ed.).  pp. 176-178.  Oregon State University Press, Corvallis.