シダムシ・ノート(謹賀新年)

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謹賀新年
 


皆さま、明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。


 
さて、


寄生性甲殻類を調査していると、そういった研究家が珍しいのか、けっこう面白い問い合わせをうけることがあります。
 
昨年の『日本甲殻類学会第53回大会in東京海洋大学』で、「シダムシって興味ありますか? 是非いっしょにやりませんか?」というお誘いを受けました。まったく唐突にです!


 もちろん興味ありますとも! とは思いましたが、まったく不勉強な未知の寄生虫なので、かなり躊躇しました。でも本能にはあらがえませんでしたよ(苦笑)


 ということで、今年はシダムシやっちゃいます!


「熱いぜシダムシ!」


これが今年の合言葉です。


  
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シダムシとはヒトデ類内部寄生性の甲殻類で、
分類学的には嚢脚下綱Ascothoracida・シダムシ目Dendrogastrida・シダムシ科Dendrogastridaeのシダムシ属Dendrogaster Knipovich, 1890に位置します。


 シダムシ科にはほかにBifurgaster Stone & Moyse, 19853種とUlophysema Brattström, 19362種が所属するようです(Grygier, 2015)。
 
嚢脚類は図鑑等では、『新日本動物図鑑』(1965)では、亜綱、『原色検索日本海外動物検索図鑑』(1995)では下綱とされています。WoRMSでは下綱でした。


 シダムシ類は世界で31種が知られ(Grygier, 2015)、国内からは下記の3種が報告されています(小川, 1995)。しかし、未記載種も多々あるものと思います。


1. Dendrogaster astropectinis (Yosii, 1931)モミジガイシダムシ
小川数也[原色検索日本海岸動物図鑑(Ⅱ)], 1995, p. 138, fig. 21-94.
宿主:モミジガイAstropecten scoparius Müller & Troschel, 1842とヒラモミジガイAstropecten latespinosus Meissner, 1892

2. Dendrogaster okadai (Yosii, 1931) オカダシダムシ
Myriocladus ludwigi:内海冨士夫[新日本動物図鑑(中)], 1965,p.520, No.658.アカヒトデシダムシ*
*オカダシダムシの誤同定であった経緯が、小川(1995)に記されている。
Myriocladus okadai: 内海冨士夫[原色動物大図鑑(Ⅳ)], 1961, p.133, pl. 66, No.9.
内海冨士夫[新日本動物図鑑(中)], 1965,p.520, No.657.
Dendrogaster okadai:小川数也[原色検索日本海岸動物図鑑(Ⅱ)],1995, p. 138, fig. 21-93.
宿主:ヤツヒトデCoscinasterias acutispina (Stimpson, 1862)


3. Dendrogaster ludwigi Le Roi, 1905 ルソンヒトデシダムシ
Dendrogaster ludwigi:小川数也[原色検索日本海岸動物図鑑(Ⅱ)],1995, p. 138, pl. 78-12.
宿主:ルソンヒトデEchinaster luzonicus (Gray, 1840)


 鳥羽水族館の飼育ブログでは、国内に7種とされています。


体型は、寄生虫特有(?)の、なんとも形容しがたい独特の風体をなします。メスは樹根様に分岐しています(見ようによってはサンゴっぽい?)。こんな体ですが、しっかり第1触角や第2小顎を持つそうです。また、オスは二枚貝様の背甲を持ちますが、これから長大な側突起を生じ、全形は、なんというかコンパス、というかフトンバサミを連想させます。


 卵からの孵化幼生は、ノープリウスnaupliusだったり、メタノープリウスmetanaupliusだったり、二枚貝様の背甲をもったascothoracid幼生だったり、種の進化段階によって異なるそうです。 


シダムシでググッてみると、約620件ヒットします。


このページなど、よくまとまっているように思います(何さま目線なんじゃ! 失礼な物言い・謝)


 シダムシは本当に勉強不足なのですが、興味がないのはけではなく、どちらかといえばその逆です。この機会にガッツり勉強したいと思います。でも日本語の参考書がほとんどなく、私のシダムシ感は、古臭かったり、ゆがんでいるかもしれません。詳しい方、是非ご教示お願いいたします。


 
<引用文献>
Grygier, M. 2015. DendrogasterKnipovich, 1890. In: Grygier, M.J. (2015) World Ascothoracida Database.Accessed through: World Register of Marine Species athttp://www.marinespecies.org/aphia.php?p=taxdetails&id=103957 on 2015-12-08.
Grygier, M.J. & Høeg, J.T., 2005. Ascothoracida (ascothoracids).Klaus, R. (ed.), Marine Parasitology, 149-154 pp. CSIRO Publishing,Collingwood, Victoria.
小川数也.1995.根頭下綱・のう(嚢)胸下綱.In西村三郎編,原色検索日本海岸動物図鑑(II)pp.133-138保育社,大阪.
椎野季雄.1964.動物系統分類学7(上).節足動物(I),総説・甲殻類3+312 pp.中山書店,東京.
内海冨士夫.1965.嚢胸亜綱.In岡田 要・内田清之助・内田 亨監修,新日本動物図鑑(中).pp.519-520,No.655-658.北隆館,東京.
 


追伸.シダムシ類を研究するには、下記2論文の勉強が必修のようです。入手せねば。しかもロシア語(涙)


*Wagin, V. L.,  1950. [On new parasitic crustaceans of thefamily Dendrogasteridae (order Ascothoracida)]. Trudy Leningr. Obshch. Estestvoispyt. 70,4: 3-89 (in Russian).
*Wagin V.L.,  1976. Meshkogrudyye Raki (Ascothoracida).(Izdatel’stvo Kazanskogo Universiteta: Kazan). 140 pp. (In Russian.)
*未収集文献


 


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シダムシの雌の体系を見ていると、中学生頃(かな)に習った、樹木の葉のつき方を思い出します。


なので、そういうのをネットで調べてみました。


「葉序 ようじょ phyllotaxis」というようです。
●「対生opposite」:同一節上に2枚の葉をつける(ナデシコ科など)
●「輪生verticillate」:同一節上に3枚以上の葉を生じる(キョウチクトウなど)
●「互生alternate」:各節に1枚ずつの葉をある決った角度 (開度) で生じる(バラ,タバコなど多数)
 


それぞれの日本語名称をネットで英訳しても、これら専門用語に変換されませんでした。
逆に英語名称を和訳すると、ちょっとオシイ感じの訳。
なので、ここにメモっときます。(「葉序」はちゃんと訳してました)
 


サンゴとか、樹状形態の動物の記載にはこれらの用語が使われるでしょうか? 不勉強でわかりませんが、枝の形状を的確に表現した用語ですので、