タカアシガニ

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学名Macrocheira kaempferi (Temminck, 1836)。

いわずと知れた、世界最大の節足動物です。脚を広げると3~4mくらいになるといわれます。ギネスブックには5.79mの記録があるとか。甲長は30cmを超えるくらいに成長します。オスはメスに比べて大型で、またハサミ脚が長いことも特徴です。ハサミ脚の伸長(二次性徴)は甲長25cmくらいから現れます。

日本の太平洋岸に沿って岩手県釜石沖から九州西岸まで分布し、台湾東部や東シナ海西部からも記録されます。分布水深は20~500m。産卵期に浅場に移動するといわれますが、否定的な意見もあります。

抱卵数は85万~135万粒。産卵期は3~4月で、約1年間抱卵します。ゾエア幼生は2期で、25日程度でメガロパ期になります。


タカアシガニは、日本の動植物を世界ではじめて研究したエンゲルベルト・ケンペルEngelbert Kaempferによって、ヨーロッパに紹介されたのです。彼は元禄3年からの3年(1690~1692年)の間、オランダ商館医として2回江戸幕府を訪問し、日本の自然についての認識を深めて帰国しました。彼の死後、「日本誌The History of Japan」(1727)が刊行され、日本の自然が初めてヨーロッパに紹介されています。第1巻11章が水生動物の章で、ケンペルが持ち帰った「訓蒙図彙」の第2版が引用されています。この中に、タカアシガニの歩脚の原図が収められており、世界最大の節足動物が初めて世界に紹介されているのです。


漁獲対象種で、定置網、刺網、手繰網、底曵網、底延縄、カニかごなどで漁獲されます。駿河湾東岸(伊豆半島側)の戸田が漁獲基地として有名で、戸田漁業協同組合に所属する小型底曵網漁船10隻とカニかご漁船2隻により漁業が行われ、重要な観光資源にもなっています。漁期は9月1日から翌年5月15日。漁獲量は1976年には24.7トンでしたが、減少傾向にあり、1984年には5.4トン、1985年には最低の2.9トンです。以後多少回復し、1990年には9.6トン。多いときには日に100匹ぐらい獲れることもあるそうです。

http://www.pref.shizuoka.jp/j-no1/m_takaashi2.htm


写真は町田の某百貨店地下の鮮魚テナントで撮影したもの。店先で売られるのを初めてみて、興奮して携帯のカメラで撮影したのですが、接写モードだったため、ボケボケ写真となってしまいました(平成20年3月1日(日)撮影)。
¥5800円でした。(買ってないヨ)


参考文献
1)長谷川新三.1992.駿河湾タカアシガニ:漁の風景 12.うみうし通信,12:48-49.
2)久保田 正・山田信夫.1994.タカアシガニ研究史及び文献目録.東海大学海洋研究所研究報告,15:89-95.
3)西村三郎.1995.日本近海動物相研究小史.In西村三郎編.原色検索日本海岸動物図鑑(II).pp.xix-xxxv.保育社,大阪.
4)武田正倫.1992.カニは横に歩くとは限らない:甲らに包まれた不思議な仲間たち.236 pp.PHP研究所,東京.
5)武田正倫.1995.エビ・カニの繁殖戦略:自然叢書 27.239 pp.平凡社,東京.
6)武田正倫.1995.タカアシガニ.In(社)日本水産資源保護協会,日本の希少な野生水生生物に関する基礎資料(II):水産庁委託“希少水生生物保存対策試験事業”.pp.636-641,666,pl.7.東京.
7)田名瀬英朋.1968.タカアシガニ幼生の飼育について.動物園水族館雑誌,10(2):46-48.
8)安原健允.1991.タカアシガニの生活史.うみうし通信,11:30-34.
9)安原健允.1992.世界最大のカニタカアシガニ.動物たちの地球,69:2・283.
10)安原健允.1995.タカアシガニ研究史タカアシガニ研究に関する文献目録.Cancer,4:31-36.
11)安原健允.2000.博物館のタカアシガニ:外国の博物館・展示5例.Cancer,9:45-50.
12)安原健允.2001.タカアシガニの水産生物学的研究.月刊海洋,号外26:214-222.