日本のザリガニ

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日本にはザリガニ類が3種類生息しています。

そのうちの1種、ニホンザリガニはもとから日本いた「在来種」ですが、ほかの2種は外国から持ち込まれて日本に居着いた「外来種」です。



ザリガニという名前の由来については諸説あるようです。一説には、驚くと後退することから、ネガティブなイメージで「しざるガニ」、これが「ザリガニ」になったとか。

大きなアメリカザリガニのオスを「マッカチン」っていうけど、これの由来はなんだろうか?




●ニホンザリガニCambaroides japonicus (De Haan, 1841)

 日本在来種です。単に「ザリガニ」と呼ばれていましたが、最近では「ニホンザリガニ」という和名が普及しているように思います。

 成熟までに5年かかるそうです。1回の産卵で50~80粒を産み、抱卵期間は数ヶ月におよびます。

 ニホンザリガニは天然記念物にも指定されています:「ザリガニの生息地」(ニホンザリガニの分布南限地帯に位置する,秋田県大館市桜町南と同市池内道下の本種の生息地,昭和9年(1934年)1月22日指定)。
 また、環境省版,水産庁版、青森県岩手県山形県によって「希少生物」に指定されています。



アメリカザリガニProcambarus clarkii (Girard, 1852)

 もっとも身近なザリガニ類だと思いますが、実は「外来種」です。(名前をみてもわかりますが...)
 1927年(昭和2年)5月に、当時神奈川県鎌倉市岩瀬で大規模養殖の研究が行われていた食用ガエルの餌として、ニューオリンズから輸入されました。出荷時は200匹のウシガエルRana catesbeiana Shaw, 1802とともに100匹のアメリカザリガニが積み込まれましたが、1ヶ月後の横浜港到着時には約20匹が生き残ったに過ぎなかったそうです。これらは神奈川県大船市のウシガエル養殖池に放流されましたが、その後周囲にひろがり、10年後の1940年代には関東一円に、20年後(1950年代)には東北南部以南、2000年には北海道を含む日本全土に蔓延しています。全国でみられるアメザリの起原はたった20匹なんだそうです!!
 近年北海道にまで進出しはじめたアメリカザリガニは、在来種ニホンザリガニを駆逐しはじめているそうです。
 本種がはじめて輸入された鎌倉市岩瀬町には「アメリカザリガニの故郷」と書かれた看板が建てられています。(いつか見に行かねば!)

 初夏ごろ交尾し、1~3ヶ月後の夜に産卵します。産卵数は200~400粒(卵径約2mm)で、産卵後2週間ほどで体長4 mmほどの稚エビが孵化します。孵化後1年の間に7~15回(平均9回)脱皮して体長4.5cmとなり、2年目に2~5回(平均4回)、3年目に2回ほど脱皮します。平均的な体長9 cmの個体は生後3年ほど。
 生後約1年半、11回ほど脱皮して体長6cmに達し、性成熟します。飼育下では5年以上生存するそうです。

 京都府RDBでは要注目種-外来種京都府内において生態系に特に悪影響を及ぼしていると考えられる種)としてアメリカザリガニが指定されています。



ウチダザリガニPacifastacus leniusculus (Dana, 1852)

 北海道や本州の一部に分布する外来種です。
 アメリカ北西部が原産地で、1909年に初めて輸入されています。
 和名「ウチダザリガニ」は、北海道大学動物系統分類学講座を担当していた内田 享教授にちなんだもの。「シグナルザリガニ」という和名も提唱されましたが、定着していないように思います。

 滋賀県淡海池に生息するものをタンカイザリガニPacifastacus leniusculus (Dana, 1852)、北海道の摩周湖を中心に、道東全域に分布するものをウチダザリガニP. trowbridgii (Stimpson, 1857)として紹介されていましたが、現在ではこれらは同じ種類とされています。

 この種は、水産庁によって「優良水族導入」の名目で、1926年から1930年にかけて5回にわたり、オレゴン州ポートランドから1都1道21県に移殖されています。しかし現在では「特定外来生物被害防止法」の特定外来種に指定されています。(なんだか勝手なはなしですよね)



●メキシコザリガニCambarellus patzcuarensis Villalobos, 1943

 1972年(昭和47年)3月7日、メキシコのエチュベリア前大統領から、メキシコ産のザリガニ、約70個体が昭和天皇に贈呈されたザリガニです。その後、東京水産大学、上野水族館、男鹿水族館、江の島水族館等に配布され、飼育も試みられています。しかし、現在これらの子孫は残っておらず、当時観察された標本の所在も不明とのことです。



●その他(ペット)
 最近のペットブームで、海外のザリガニがペットショップで販売されています。ですが、平成17年6月1日から「特定外来生物被害防止法」(通称「外来生物法」)が施行され、外来種の国内への持ち込みが規制されるようになっています。第2次指定(平成17年12月14日付け公布)では、下記のザリガニ類が規制対象種として特定外来生物に指定されています。
 ・アスタクス属Astacus Astacus属の全種
 ・ウチダザリガニPacifastacus leniusculus 亜種タンカイザリガニを含む
 ・ラスティークレイフィッシュOrconectes rusticus
 ・ケラクス属Cherax Cherax属の全種
これらの中には、万が一、野外に逃げだすと、その恐ろしいほどの繁殖力によって日本の生態系が一変してしまうのではないかと危惧されている種類もいるそうです!!。



●●まだちょっと書きたりません、いづれ加筆したいと思います●●





[参考文献]
1)青森県環境生活部自然保護課.2000.青森県の希少な野生生物:青森県レッドデータブック.8+283 pp.青森.
2)一寸木肇.2001.ザリガニ類の和名における問題.Cancer,10:35-38.
3)岩手県環境生活部自然保護課野生生物係.2001.いわてレッドデータブック岩手県の希少な野生生物.19カラー図版+613 pp.ネクサス,盛岡.
4)ジャパンクレイフィシュクラブ(JCC)編(浜野龍夫監修).2003.世界のザリガニ飼育図鑑:増補版.135 pp.マリン企画,東京.
5)環境省自然環境局野生生物課.2006.改訂・日本の絶滅のおそれのある野生生物:レッドデータブック, 7 クモ形類・甲殻類等.86 pp.(財)自然環境研究センター,東京.
6)環境省自然環境局野生生物課.2006.レッドリスト その他の無脊椎動物.4 pp.[http://www.biodic.go.jp/rdb/rdb_f3.html]
7)浜野龍夫.1992.神秘の湖に潜む巨大ザリガニの謎.うみうし通信,13:26-35.
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10)川井唯史.2007.ザリガニの博物誌:里川学入門.166 pp.東海大学出版会,神奈川.
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25)山形県希少野生生物調査検討委員会動物部会.2003.:レッドデータブックやまがた:山形県の絶滅のおそれのある野生動物.302 pp.山形県文化環境部環境政策推進室環境保護課,山形.
26)山口恒夫.2000.ザリガニはなぜハサミをふるうのか:生きものの共通原理を探る.238 pp.中央公論新社,東京.