Nob!!の勝手に甲殻類 :トップ

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日本産甲殻類について綴っているブログです。ほとんどはマイナーな種類ですが...(汗)

ボチボチと更新して参ります。お付き合いのほど、ヨロシクお願いいたします。
月イチくらいでアクセスいただければ、少しはページが増えていると思います。

100ページ達成に伴い、書庫を増やしてブログ内を整理しようと思ったのですが...そしたら、リンクが壊れちゃったみたいですm(__)m。
こういったバグや、工事中のページも随時更新してまいります。

もしそういった不具合を見かけましたら、「リンク壊れてるヨ」って教えてください。



このページは気まぐれに記事内容を書き換えます(おことわり)

 

 

 

注)写真の無断転用はかたくお断りいたします。

【文献紹介】セミエビ科フィロソーマ幼生の同定

やりたいことは山ほどあれど、なんかスイッチ入らず、ちょっと気になってた文献について紹介したいと思います。(紹介なんておこがましく、この文書きながら勉強させていただいております)、、、現実逃避orz

 

フィロゾーマ幼生はなんか特異な形をした、広義のイセエビ類の浮遊幼生で、大型プランクトンネット採集物中に、比較的普通にみられる海洋プランクトンです。種同定のためのテキストとして、雑誌『海洋と生物』に連鎖があり、コピーはとったものの、Nob!!は不勉強のまま書棚の肥やしになった状態。おはずかしい。こちらも追って紹介したいと思いますが、、、今回は最近学術雑誌『水生動物』に掲載されているセミエビのフィロゾーマ幼生研究について、興味が薄れないうちにまとめたいと思います。

 

Nob!!もセミエビ類のフィロゾーマ興味あり、15年前に書いた記事もありました:

https://nobnob.hatenablog.jp/entry/13550200

 

  • セミエビ科フィロソーマ幼生の同定

1.概論.水生動物, 2021(張 成年・柳本 卓)

2.ハワイカザリセミエビ Arctides regalis Holthuis, 1963.水生動物, 2021(張 成年・柳本 卓・小西光一)

  掲載種 ハワイカザリセミエビ Arctides regalis Holthuis, 1963

3.セミエビ属 Scyllarides.水生動物, 2022(張 成年・小西光一・柳本 卓)

  掲載種 セミエビScyllarides squammosus (H. Milne Edwards, 1837)、Scyllarides sp-B、Scyllarides sp-C

4.ゾウリエビ属 Parribacus.水生動物, 2022(張 成年・小西光一・柳本 卓)

  掲載種 ミナミゾウリエビParribacus antarcticus (Lund, 1793)、ゾウリエビP. japonicus Holthuis, 1960、Parribacus sp.

5.ヒメセミエビ Chelarctus virgosus CH Yang and TY Chan, 2012.水生動物, 2022(張 成年・柳本 卓)

  掲載種 ヒメセミエビ Chelarctus virgosus CH Yang and TY Chan, 2012

6.Chelarctus aureus.水生動物, 2022(張 成年・柳本 卓)

  掲載種 Chelarctus aureus (Holthuis, 1963)

7.ツノヒメセミエビ属 Chelarctus の未記載種.水生動物, 2022(張 成年・柳本 卓)

  掲載種 ?Chelarctus sp-1

  備考 ツメヒメセミ属が正解。タイトルは誤記

8.Galearctus lipkei のフィロソーマ幼生はヒメセミエビ亜科中最大である.水生動物, 2022(張 成年・柳本 卓)

  掲載種 Galearctus lipkei Yang & Chan, 2010

9.カブトヒメセミエビ属(Galearctus)の未同定種.水生動物, 2022(張 成年・柳本 卓)

  掲載種 Galearctus sp-A

10.中部北太平洋で採集された Crenarctus crenatus の幼生.水生動物, 2022(張 成年・柳本 卓)

  掲載種 Crenarctus crenatus (Whitelegge, 1900)

11.フタバヒメセミエビCrenarctus bicuspidatus の最終期幼生.水生動物, 2023(張 成年・柳本 卓)

  掲載種 フタバヒメセミエビCrenarctus bicuspidatus (De Man, 1905)

12.ウチワエビ属 Ibacus の幼生:総説.水生動物, 2021(張 成年・柳本 卓・若林香織

  掲載種 オオバウチワエビIbacus novemdentatus Gibbes, 1850

  1. エクボヒメセミエビ属(Eduarctus)の最終期幼生.水生動物, 2024(張 成年・柳本 卓)

  掲載種 エクボヒメセミエビ属Eduarctus sp-A

 

 

この一連の論文では、フィロゾーマの形態的特徴を記載するとともに、DNA分析(COIと16S rDNA)も行っているのが大きな特徴です。

ヒメセミエビ亜科Scyllarinaeは現在13属54種からなるが(DecaNet 2024)、GenBankにはCOIが21種、16Sが37種の登録があるのみとのこと。DNA情報はまだあだ不足しているそうです(No.13: 張・柳本, 2024)。

ヒメセミエビ亜科のフィロソーマ幼生は張・柳本(No.1: 2021)に従って選別したと記されています(No.13: 張・柳本, 2024)。

 

 

※このページは(も)追って加筆いたします。また、なにか間違い見つけた人は、是非ご一報ください。

 

 

 

<引用文献>

DecaNet (2024). DecaNet. Scyllarinae Latreille, 1825. Accessed through: World Register of Marine Species at: https://www.marinespecies.org/aphia.php?p=taxdetails&id=382774 on 2024-06-01.

アクセス数(2024.7.22) セロリス案件か?

昨日、テレビでちらっとセロリス映ったと聞きました。まだそれみれていませんが、、、

当ブログが何かお役に立てていれば幸いです。

 

 

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・

(2024.7.27加筆)

『日本⇔南極35000km!南極観測船“しらせ”に乗せてもらいました!』(テレビ東京2024年7月21日20時)の番組中、ROV NIPROV-2K(水中ロボット)が、セロリスの一種(ダンゴムシの仲間 南極周辺に多い 甲殻類)として、重なり合う2個体を撮影してました。約1時間の調査後、ROVの採集物中からこのセロリスを発見! 調査(第65次南極地域観測隊)に同行された名古屋大学の自見直人さんが「ちょっと欲しかったものが採れました。セロリスの仲間が。2個体が交尾していたやつがいたんですけど、それがちゃんと入っていました」と紹介していました(でもこれ交尾ですか? 交尾前ガードかもしれません)。ほんの数分の放映でした。しかしでかい! 手袋と比較して、10 cmちかくあるような個体でした。なんていう種ですかね。興味津々です。調査地点は、トッテン氷河沖、水深440mとのことです。

 

Nob!!もセロリスは学生のころから興味ある分類群のひとつです。でも標本が手に入らないから、実際何かをする機会はないんだと思いますが、、、

https://nobnob.hatenablog.jp/entry/2023/10/06/132622

 

なお、葛西臨海水族園では、セロリス飼育しているみたいです。xに出てました。常設展示なのかなぁ?

 

みなさん、セロリスには「スナコバンムシ」っていう和名あるんですよ! 浸透させましょう!

 

番組アーカイブの動画からスクショしました。アウトだったら削除します。

【海の日企画】ウキウオジラミ論文2編

海の日ぃ~ in 2024

 

某2大学会の会長を務めるSO先生から、「Nob!!さんウキウオジラミ好きなんだね。Netみたよ。関係論文紹介するよ」って、(ちょっと前に)2論文を送っていただきました。恐縮です。

読まなきゃ読まなきゃと、時間たってしまいましたが、やっとアブストラクト読めたので、忘れないようにブログにあげておきます。海の日らしいでしょ! 読み間違いなどありましたらご指摘ください。

 

 

Ohtsuka ら(2020)Abstract:ウキウオジラミCaligus undulatus Shen & Li, 1959 はインド-西太平洋および大西洋の沿岸および外洋域プランクトンサンプルから広く報告されている。これまで、宿主魚類は知られていない。このカイアシ類は主に寄生性のグループであるが、本種は動物プランクトンとしてのみ発見されている。予想外に、2019年10月、瀬戸内海のサッパSardinella zunasi (Bleeker, 1854)からC. undulatusが発見された。このウオジラミの幼体(カリムスchalimus)と成体が寄生虫として宿主から発見された。この発見は、本種がほかの“プランクトン性”ウオノシラミ類と同じ生活史を持ち、成体の段階で宿主を切り替えプランクトンに移行する可能性を示唆している。ここで、ウキウオジラミ・グループC. undulatus groupを、プランクトン性として知られている5種から、属内に新設した。ウオノシラミ類の生活史の変異に関するいくつかの仮説についても簡単に考察した。

 

Kondo ら(2024)Abstract:2019年以前、ウキウオジラミCaligus undulatusの成体はプランクトンサンプルからのみ知られ、宿主魚類は不明であった。2019年、本種の第1宿主としてサッパSardinella zunasiが瀬戸内海から記録された。本研究ではプランクトン群集内におけるウキウオジラミ成体の生物学と生態学を調査することを目的として、2020年3月から2021年に11月にかけて瀬戸内海周辺海域を調査した。ウオジラミは8月から1月、特に10月から12月に出現し、2020年11月30日に最高値(10.5個体/1000m3)を記録した。すべてのウキウオジラミの後期ノープリウス期が宿主魚で発見され、それらは ウオジラミ属で知られる典型的な生活史パターンを表していた。プランクトンと寄生虫とで性比に有意差はなかった。プランクトンと寄生虫における抱卵メスの出現率は、それぞれ68%と46%であった。卵嚢中の卵数は寄生虫の成体メスのほう(平均± SD: 16.9 ± 8.6)がプランクトン(10.4 ± 10.8)よりも有意に多かった。これらのデータは、成体メスは宿主から離れ、摂食せずに卵を産み続けたことを示唆している。サッパの産卵のための汽水域への季節移動は、成熟したウオジラミ類を魚体から分離させ、子孫の汽水耐性を低下させる効果が考えられる。

 

 

<文献>

Ohtsuka, S., Nawata, M., Nishida, Y., Nitta, M., Hirano, K., Adachi, K., Kondo, Y., Venmathi Maran, B. A., & Suárez-Morales, E., 2020. Discovery of the fish host of the ‘planktonic’ caligid Caligus undulatus Shen & Li, 1959 (Crustacea: Copepoda: Siphonostomatoida). Biodiversity Data Journal, 8, e52271.

Kondo, Y., Ohtsuka, S., Nawata, M., Nishida, Y., Komeda, S., Iwasaki, S., Aneesh, P. T., Balu Alagar Venmathi Maran, B. A. V., 2024. Habitat shift of adult Caligus undulatus (Copepoda: Siphonostomatoida: Caligidae) from host fish to plankton in response to host behavior. Diseases of Aquatic Organisms, 157:81-94.

【七夕案件】情報提供お願いします。

【七夕案件】情報提供お願いします。

知人を介し、オリヒメヒトデHenricia reniossa reniossa Hayashi, 1940の体内からシダムシが見つかったと連絡をうけました。このヒトデからのシダムシの知見はありません(確か)

ただ残念なことに標本の状態が悪く、分類形質の確認は難しそうです。

もし、そういった情報お持ちの方いらっしゃいましたら、是非ご一報いただきたくお願いいたします。。

 

オリヒメヒトデに関する知見はこちら;

https://www.jstage.jst.go.jp/article/aquaticanimals/2024/0/2024_AA2024-1/_article/-char/ja?fbclid=IwZXh0bgNhZW0CMTAAAR3FORq1ScZoYorCAfRFSS0VNrxGt8BgaSEBsX_FnyeEordQEzgBYGTbHVk_aem_BSbupzSt6RE3N4oOapjDEQ

 

シダムシって何って方はこちらをご覧ください:

https://nobnob.hatenablog.jp/entry/2024/02/03/110531

https://nobnob.hatenablog.jp/entry/2023/04/21/125602

https://nobnob.hatenablog.jp/entry/2020/07/30/201209

https://nobnob.hatenablog.jp/entry/2020/03/01/124327

https://nobnob.hatenablog.jp/entry/35827703

https://nobnob.hatenablog.jp/entry/35202859

https://nobnob.hatenablog.jp/entry/34936825

速報! フナムシ問題解決?!

 

図 トライフナムシcomplex 3種(Ariyama & Hiki, 2024より)、AM, 交尾針; P1・P2, 第1・第2胸脚; PL2, 第2腹肢。どこかから叱られたら削除します。

 

海岸にわらわらいるフナムシLigia exotica Roux, 1828。

日本産のフナムシが実は3種だったという論文が公表されました(Ariyama & Hiki, 2024)。

 

有山さんといえば著名なヨコエビ研究者ですが、ガザミで学位とられているし、ヨツハモガニやシャコ、コツブムシで論文書かれているし、甲殻類大好きな先生のようです。

 

 

そもそも日本には10種のフナムシ属が生息していますが(布村・下村, 2017ab)、この論文ではそのうちのザ・フナムシに焦点を当てたもの。

東京湾、大阪湾、宍道湖島根県)などの標本を精査し、2新種が含まれていることを明かしています。

 

トライフナムシLigia exotica Roux, 1828(和名改称)

  国内の分布 大阪~兵庫、島根県

  特徴 オスの第2腹肢の交尾針先端に拡張部がない。第1触角と尾肢が長く、オス第1胸脚前節前縁に拡張部を持つことが特徴とされてきた。

  ”Ligia exotica artificial-coastal form”とされています。

フタマタフナムシLigia furcata Ariyama & Hiki, 2024

  国内の分布 江の島(神奈川)、千葉(?)、東京

  特徴 オスの第2腹肢交尾針先端に角ばった拡張部あり。オス第1胸脚前節前縁が二叉状。またメス第2・第3胸脚腕節がトライフナムシに比べて細い。

アオホシフナムシLigia laticarpa Ariyama & Hiki, 2024

  国内の分布 大阪、和歌山、淡路島(兵庫)、千葉(?)

  特徴 オスの第2腹肢交尾針先端に丸い拡張部あり。オス第1胸脚前節前縁が二叉にならず、腕節は太いかあるいはやや膨れる。メス第1胸脚長節が弱く広がる。またオスの体背面に青い斑紋が分布する。

  ”Ligia exotica natural-coastal form”とされています。

 

大阪市立自然史博物館のHPでも紹介されています:

https://omnh.jp/archives/11330

 

 

なお、既知の日本産10種は以下の通りですが、このうちのシンジコフナムシは今回の論文(Ariyama & Hiki, 2024)によってトライフナムシのジュニアシノニムになっています。なので現在の日本産フナムシ属は11種。

1.オガサワラフナムシLigia boninensis Nunomura, 1979

  タイプ産地は小笠原諸島母島沖村。森の小道にみられる。

2.キタフナムシLigia cinerascens Budde-Lund, 1885

  北海道に多く、本州・四国の波あたりの弱い内湾、転籍海岸や干潟の周辺に生息。

3.ダイトウフナムシLigia daitoensis Nunomura, 2009

  タイプ産地は沖縄県北大東島の沖縄海岩礁。南北大東島に分布。

4.フナムシ(現トライフナムシLigia exotica Roux, 1828

  タイプ産地はフランスのマルセイユ。世界の温帯域から広く報告される。日本でもっともふつうにみられるフナムシ属で、本州・四国・九州・薩南諸島の海岸・岩礁の汀線上に生息。

  WoRMSではMegaligia亜属が設定されています。

5.ハチジョウフナムシLigia hachijoensis Nunomura, 1999

  タイプ産地は伊豆諸島八丈島の汐間海岸。潮間帯から海岸林にみられる。

6.ミヤケフナムシLigia miyakensis Nunomura, 1999

  タイプ産地は伊豆諸島三宅島。潮間帯から飛沫帯にみられる。

7.リュウキュウフナムシLigia ryukyuensis Nunomura, 1983

  タイプ産地は沖縄県宮古諸島伊良部島良浜。鹿児島県奄美諸島沖縄諸島宮古諸島八重山諸島尖閣諸島に分布。

シンジコフナムシLigia shinjiensis Tsuge, 2008

  タイプ産地は島根県松江市玉湯の宍道湖湖畔。中海、大橋川、神西湖に生息。

  トライフナムシのジュニアシノニムとされる(Ariyama & Hiki, 2024)

8.ナガレフナムシLigia torrenticola Nunomura, 2011

  タイプ産地は小笠原諸島父島初寝浦川。兄島にも分布。

9.アシナガフナムシLigia yamanishii Nunomura, 1990

  タイプ産地は小笠原諸島父島初寝浦。岩礁の高潮線付近の石の裏などにみられる。

 

 

 

<文献>

Ariyama, H., & Hiki, K., 2024. A morphological and molecular study of Ligia exotica Roux, 1828 (Crustacea: Isopoda: Ligiidae) from Japan, with descriptions of two new species. Zootaxa. 5433(4): 451-486.

布村 昇・下村通誉,2017a.日本産等脚目甲殻類の分類(47):ワラジムシ亜目・フナムシ科①・フナムシ属①.海洋と生物, 232: 506-511.

布村 昇・下村通誉,2017b.日本産等脚目甲殻類の分類(48):ワラジムシ亜目・フナムシ科②・フナムシ属②.海洋と生物, 233: 643-646.