今年もウオノエ!

 
 
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謹賀新年
 皆様、2015年正月、いかがお過ごしでしょうか。当方、元旦には若干顕微鏡作業を行ったものの、この寒さで心折れました(現実的に指先が思うようにうごきませぬ)。本日は、日ごろモンモンとしている、ウオノエへの胸の内を打ち明けたいと存じます。
 
ウオノエとは、等脚目ウオノエ科の総称で、海産・淡水産魚類の口腔・鰓腔・腹腔や、体表などに寄生する、甲殻類の一群です。世界から43属約360種が知られ、日本国内からも約50種が記録されています。
 
特に人的被害をもたらす寄生虫ではありませんが、見た目が奇異なためか、古くから文献等に登場いたします。漁業者や遊漁者への関心(?)も高く、Googleで「ウオノエ」で検索してみると、約 103,000 件がヒットします。
 Wikipediaのウオノエ科 の記載などは、とてもしっかりしています。
 また、広島大学生物圏科学研究科瀬戸内圏フィールド科学教育研究センター竹原ステーション(水産実験所)のHPにも詳しい解説があります。
 山内先生らの書かれた、「瀬戸内海のウオノエ科魚類寄生虫」(2004)には、タイノエに関する江戸時代の記述などが引用されていて、興味深いです。
 
当ブログでも幾度となくウオノエ類のご紹介をしてまいりました。実はお気に入りのグループなのです(冒頭で書いたか)。
 
当ブログをよく見ていただいている小三郎Jrさんも、ウオノエお好きらしく、氏のブログにはその思いのたけがつづられております。
 カイワリの記事にある「カイワリに寄生するヒゲブト属です。釣りを覚え始めた漁師の子供が、一番先に遭遇するウオノエはこれかマルアジのどちらかだと思います。」という記述は、現場を知られている氏ならではのご意見であり、非常に有用な見解と感じます。
 
Wikipediaにもまとめられていますが、ウオノエ科各属は、所属種24程度のものが多いようです。10種以上からなる属としては:
  ウオノギンカ属 Anilocra Leach, 1818 - 49
  ヒゲブトウオノエ属 Ceratothoa Dana, 1852 - 29
  ウオノエ属 Cymothoa Fabricius, 1787 - 47
  エルウオノエ属 Elthusa Schioedte & Meinert, 1884 - 28
  Ichthyoxenus Herklots, 1870 - 23
  エラヌシ属 Mothocya Hope, 1851 - 29
  ウオノコバン属 Nerocila Leach, 1818 - 42
  Renocila Miers, 1880 - 18
などが見られます。ウオノギンカ属、ウオノエ属、ウオノコバン属がダントツですね。ウオノエ属は口腔内寄生性ですが、ウオノギンカ属とウオノコバン属は体表寄生性です。
 
ウオノコバン属としては、イワシノコバンNerocila phaiopleura Bleeker, 1875が比較的よくみられるように感じます。
 ウオノコバンはこれまでNerocila acuminate Schioedte & Meinert, 1881の学名があてられてきましたが、日本近海の標本を詳しく調べられて、Nerocila japonica Schioedte & Meinert, 1881とすることが妥当という見解が出されています(Yamauchi & Nagasawa, 2012)。
 ウオノギンカ属については不勉強でよく知らないのですが、昨年の論文で、浮遊期の幼体が集魚灯によく蝟集するということが報告されていました(Saito et al., 2014)。
チリモンとして見られるこちらの細長いのも、ウオノギンカ属のエガトイド期幼体のようです。
 
口腔内ウオノエとしては、ヒゲブトウオノエ属(29種)とウオノエ属(47種)が種数の上では双璧をなすようです。見かけるものとしてはヒゲブトウオノエ属のほうが普通ですが、、、。
 分類学的整理がされていないから、こんなに所属種が多いのかもしれませんが、とりあえず口腔内ウオノエは、この両属を中心に違いをまとめていくべきのように感じています。
 両属の違いは触角にあるようで、ヒゲブトウオノエ属Ceratothoaは第1触角基部が接していて、ウオノエ属Cymothoaでは離れているそうです。両属の標本が手許にあるので、確認しておきたいと思います。
 
 
今年もウオノエやっていきたいと思います。年末に小三郎Jrから多くの標本をお送りいただきましたので、当ブログでも紹介させていただいていこうと思います。
 口腔内寄生性ウオノエに興味があります。もし、標本提供できるかたありましたら、ぜひお願いいたします。
 
 
 
 
【引用文献】
Bruce, N. L. 1987. Australian species of Nerocila Leach, 1818, and Creniola n.gen. (Isopoda: Cymothoidae), crustacean parasites of marine fishes. Records of the Australian Museum, 39(6): 355–412.
Saito, N., Yamauchi, T., Ariyama, H. & Hoshino, O. 2014. Descriptions and ecological notes of free-swimming forms of cymothoid isopods (Crustacea: Peracarida) collected in two waters of Japan. Crustacean Research, 43: 1-16.
Yamauchi, T. & Nagasawa, K. 2012. Redescription of the fish parasite Nerocila japonica Schioedte & Meinert, 1881 (Crustacea: Isopoda: Cymothoidae), with comments on previous records of N. acuminata in Japanese waters. Systematic Parasitology, 81(2): 147-157.
山内健生・大塚 攻・仲達宣人.2004.瀬戸内海のウオノエ科魚類寄生虫.広大FSC 報告, 1: 1-9