最近新種として報告された、トリカジカの鰓腔に寄生するウオノエ類です。
トリカジカEreunias grallator Jordan & Snyder,1901(トリカジカ科)というのは、なんだかごっつい感じの漸深海帯に生息する魚で、「体長30cmあまり。水深500m付近から知られている。分布:相模湾~高知沖」とされています(矢部, 1984)。
漸深海帯の魚類相を対象にする研究者のあいだでは、割合普通の魚だそうですが、釣獲のターゲットにはならないらしく(ヒットしないらしく)、知人の釣りキチ“H”氏はトリカジカを知りませんでした。
また、この魚種へのウオノエの寄生は、割と多くの人が知っているようです。
知人の研究者の方とこの話をしたとき、「あれって新種だったの?」という反応でした。
“トリカジカ”+“ウオノエ”でググってみると、18件がヒットしました。鳥羽水族館や沼津港深海魚水族館のブログがヒットします。学名の“Ereunias”+“isopod”でググると102件がヒットします。
http://collections.si.edu/search/record/nmnhinvertebratezoology_10596487
これらは、USNMNumber:1199033(Locality not noted from ShiinoCollection)とUSNM Number:1199031(off Tosa Bay, Kochi Prefecture)で、なんと一つは椎野季雄博士が採集された標本です!
おそらくこれらもトリカジカエラモグリと思われます。Idusa sp.に同定されているのは、本種の外観が、椎野博士の記載したアンコウハラモグリIchthyoxenus minabensis (Shiino,1951)[原記載ではIndusa属に所属]に何となく似ていて、もしかすると博士の記した標本ラベルに“Indusa sp.”と記されていたのではないかなんて想像してしまいます。
“エラモグリ”はエルウオノエ属Elthusaのうち、鰓腔寄生種につく和名のようで、本種のほか、ソコダラエラモグリElthusa propinqua(Richardson, 1904)(ソコダラ類寄生種)とオオエラモグリElthusa raynaudii (H. Milne Edwards,1840)(宿主不明)がいます(山内, 2016)。
<引用文献>
Saito, N., & Yamauchi, T., 2016. Anew species and new host records of the genus Elthusa (Crustacea: Isopoda: Cymothoidae) from Japan. Crustacean Research, 45: 59-67.
山内健生,2016.日本産魚類に寄生するウオノエ科等脚類.Cancer, 25:113–119.
なお、トリカジカエラモグリの記載論文(英語)は、下記のサイトからダウンロードできます。