【協力依頼】クマノミのウオノエを探しています。

クマノミ類と口腔寄生性ウオノエ類(和田・齋藤, 2017)

 

先日、web検索で調べものをしていて、クマノミ類の口に寄生したウオノエの写真を発見しました!

書籍(Baillie, 2020)のFig.1.2CにCeratothoa sp. in the mouth of Amphiprion polymnus (Credit: Els van der Borre)として掲載されていました(この著書、学位論文とされたサイトもあります)。

 

宿主はトウアカクマノミ、ウオノエ類はヒゲブトウオノエ属ということになります。

カッコ内のEls van der Borreは水中カメラマンのお名前(エルズ・ヴァン・デン・ボーレ)で、この名でググると、同じ写真がヒットします。氏にとっても代表作なのかも知れません。

(本著、まだ写真しかみていません。じっくり読んで、このページ加筆するかもしれません)

 

 

クマノミのウオノエといえば、齋藤・星野(2015)にクマノミAmphiprion clarkii (Bennett 1830)幼魚の口腔内に寄生したウオノエ科等脚類の幼体Unidentified juvenile 1 (infecting Yellowtail clownfish)が報告されています。幼体であるため、種同定はなされていないようです(属についても言及されていません)。

この報告では、被寄生魚3個体が確認されていて、この海域(伊豆大島)では初めて見られたとのことでした。

 

その後、この著者らによって書かれた図鑑『海の寄生・共生生物図鑑:海を支える小さなモンスター』(星野ら, 2016)の表紙にも、クマノミの開いた口に寄生するウオノエの写真が使われ、p26の解説ではウオノエ科の1種 Cymothoidae sp.と紹介されています。(齋藤・星野, 2015と同じ個体かどうかはわかりません)

 

和田・齋藤(2017)では、レンベ(インドネシア)でみられる5種のクマノミ類すべて(クマノミカクレクマノミAmphiprion ocellaris Cuvier, 1830、ハナビラクマノミA. perideraion Bleeker, 1855)、セジロクマノミA. sandaracinos Allen, 1972、Premnas biaculeatus (Bloch, 1790))の口腔内にウオノエ類の寄生がみられることが写真で紹介され、この報告では、ヒゲブトウオノエ属Ceratothoa の成体に近いものと同定(?)されています。標本は得られていないようです。

 なお、この写真は、『小学館の図鑑Neo 水の生物』(2019の新版)にも掲載されています。

 

伊豆大島で2014年に見られた3例の寄生の宿主クマノミはいずれも幼魚でしたが、レンベでの寄生は幼魚から成魚に至り、寄生率もかなり高いそうです。なお、齋籐・星野(2015)によれば、日本では伊豆大島のほか、鹿児島県、高知県八丈島でもクマノミ類へのウオノエの寄生は見られ、これらは成魚とのことです。

 

 

この論文から10年近くたっています。今、これらの海域での寄生状況がどうなっているのか興味津々です。

本ブログ読まれた皆さま、何か情報ご存知でしたら、是非ご連絡ください。

また、「実は標本持ってる」という方いらしたら、よろしかったら共同研究しませんか?

 

ご連絡お待ちいたします。

 

 

 

<文献>

Baillie, C., 2020. Understanding the evolution of cymothoid isopod parasites using comparative genomics and geometric morphometrics. University of Salford (United Kingdom) ProQuest Dissertations Publishing,  2020. 28127250.

星野 修・齋藤暢宏[著]・長澤和也[編著].2016.海の寄生・共生生物図鑑:海を支える小さなモンスター.築地書館,東京. 107 pp.

齋藤暢宏・星野 修.2015.伊豆大島で採集したウオノエ類未成熟個体の記載.Cancer, 24:53–62.

和田たか子・齋藤暢宏.2017.レンベのクマノミ類とそのウオノエ(甲殻亜門・等脚目).うみうし通信(財団法人水産無脊椎動物研究所), 97: 6–7.