オオグソクムシきたーーーー!
って大きすぎでしょ。
#呪術廻戦
本日、WoRMSのウオノエ科Cymothoidaeをチェックしまいた。
https://www.marinespecies.org/aphia.php?p=taxdetails&id=118274
前回見たの、2020.10.10のようです。このときは357種でした。
今回確認いたところ、42属370種のウオノエ類が登録されていました。
前回と比較すると以下のとおりでした:
Aegathoa Dana, 1853 2 →4種
Anilocra Leach, 1818 56 →60種
Ceratothoa Dana, 1852 25 →26種
Cinusa Schioedte & Meinert, 1884 1 →2種
Cterissa Schioedte & Meinert, 1884 2 →3種
Elthusa Schioedte & Meinert, 1884 39 →41種
Nerocila Leach, 1818 42 →44種
Norileca Bruce, 1990 3 →4種
Renocila Miers, 1880 19 →20種
Riggia Szidat, 1948 3 →6種
Asotana Schioedte & Meinert, 1881 3 →1種
Mothocya Costa in Hope, 1851 31 →30種
Telotha Schioedte & Meinert, 1884 4 →1種
Glyptothoa sagara Helna, Aneesh, Kumar, & Ohtsuka, 2023
Glyptothoa myripristae (Bruce, 1990) ←Elthusa Schioedte and Meinert, 1884
Glyptothoa propinqua (Richardson, 1904) ←Elthusa
Glyptothoa caudata (Schioedte and Meinert, 1884) ←Elthusa
この見解が承認されると、Elthusa属は41→38種となります。
クマノミ類と口腔寄生性ウオノエ類(和田・齋藤, 2017)
先日、web検索で調べものをしていて、クマノミ類の口に寄生したウオノエの写真を発見しました!
書籍(Baillie, 2020)のFig.1.2CにCeratothoa sp. in the mouth of Amphiprion polymnus (Credit: Els van der Borre)として掲載されていました(この著書、学位論文とされたサイトもあります)。
宿主はトウアカクマノミ、ウオノエ類はヒゲブトウオノエ属ということになります。
カッコ内のEls van der Borreは水中カメラマンのお名前(エルズ・ヴァン・デン・ボーレ)で、この名でググると、同じ写真がヒットします。氏にとっても代表作なのかも知れません。
(本著、まだ写真しかみていません。じっくり読んで、このページ加筆するかもしれません)
クマノミのウオノエといえば、齋藤・星野(2015)にクマノミAmphiprion clarkii (Bennett 1830)幼魚の口腔内に寄生したウオノエ科等脚類の幼体Unidentified juvenile 1 (infecting Yellowtail clownfish)が報告されています。幼体であるため、種同定はなされていないようです(属についても言及されていません)。
この報告では、被寄生魚3個体が確認されていて、この海域(伊豆大島)では初めて見られたとのことでした。
その後、この著者らによって書かれた図鑑『海の寄生・共生生物図鑑:海を支える小さなモンスター』(星野ら, 2016)の表紙にも、クマノミの開いた口に寄生するウオノエの写真が使われ、p26の解説ではウオノエ科の1種 Cymothoidae sp.と紹介されています。(齋藤・星野, 2015と同じ個体かどうかはわかりません)
和田・齋藤(2017)では、レンベ(インドネシア)でみられる5種のクマノミ類すべて(クマノミ、カクレクマノミAmphiprion ocellaris Cuvier, 1830、ハナビラクマノミA. perideraion Bleeker, 1855)、セジロクマノミA. sandaracinos Allen, 1972、Premnas biaculeatus (Bloch, 1790))の口腔内にウオノエ類の寄生がみられることが写真で紹介され、この報告では、ヒゲブトウオノエ属Ceratothoa の成体に近いものと同定(?)されています。標本は得られていないようです。
なお、この写真は、『小学館の図鑑Neo 水の生物』(2019の新版)にも掲載されています。
伊豆大島で2014年に見られた3例の寄生の宿主クマノミはいずれも幼魚でしたが、レンベでの寄生は幼魚から成魚に至り、寄生率もかなり高いそうです。なお、齋籐・星野(2015)によれば、日本では伊豆大島のほか、鹿児島県、高知県、八丈島でもクマノミ類へのウオノエの寄生は見られ、これらは成魚とのことです。
この論文から10年近くたっています。今、これらの海域での寄生状況がどうなっているのか興味津々です。
本ブログ読まれた皆さま、何か情報ご存知でしたら、是非ご連絡ください。
また、「実は標本持ってる」という方いらしたら、よろしかったら共同研究しませんか?
ご連絡お待ちいたします。
<文献>
Baillie, C., 2020. Understanding the evolution of cymothoid isopod parasites using comparative genomics and geometric morphometrics. University of Salford (United Kingdom) ProQuest Dissertations Publishing, 2020. 28127250.
星野 修・齋藤暢宏[著]・長澤和也[編著].2016.海の寄生・共生生物図鑑:海を支える小さなモンスター.築地書館,東京. 107 pp.
齋藤暢宏・星野 修.2015.伊豆大島で採集したウオノエ類未成熟個体の記載.Cancer, 24:53–62.
和田たか子・齋藤暢宏.2017.レンベのクマノミ類とそのウオノエ(甲殻亜門・等脚目).うみうし通信(財団法人水産無脊椎動物研究所), 97: 6–7.
Acanthoserolis schythei (Lütken, 1858)オニジリスナコバンムシ、A,背面;B,腹面.スケール=10 mm(齋藤・佐々木, 2023より)
島根県のスーパーの鮮魚売り場でセロリスが見つかったという報告(齋藤・佐々木, 2023)を見つけました!
セロリスSerolisというのは、コツブムシ亜目等脚類のグループで、とにかくそのフォルムがかっこいい! Nob!!は学生のころ『動物系統分類学, 7(上):節足動物(I)総説・甲殻類』(椎野, 1964: 214)でその姿をみて、もう大ファンですよ! それがなんと卒業研究のプランクトン試料に1個体だけ入っていて大興奮でした。
あ、セロリスは主に南極周辺に繁栄している甲殻類で(Sheppard, 1933)、北半球にも数種しられますが(蒲生, 1991, 1994)、日本からの記録はありません(布村・下村, 2015)。Nob!!の卒業研究も、南大西洋の動物プランクトンに関するものでした。
今回スーパーで見つかったのは、Acanthoserolis schythei (Lütken, 1858)という種で、やはり南大西洋寒海域のフォークランド諸島に分布する種とのことです。
東シナ海産のソウハチCleisthenes pinetorum Jordan & Starks 1904の無眼側の鰓から見つかったそうですが、齋藤・佐々木(2023)では、水揚げ後の輸送中に輸入水産物に混ざっていたものが入り込んだのではないかと考察しています。このことを職場で話したところ、「ソウハチは漁獲時にもう死んでいたのではないか、等脚類もボロボロで死んでいただろうから、接触したくらいで鰓に入り込むなんてありえないのでは?」という意見がありました。確かに! この論文の英語タイトルがA mysterious record ... ていうのがなんか妙に面白い。
セロリスには「スナコバンムシ」という和名が提唱されているのですが(蒲生, 1994)、この報告以外で見たことがありません。布村・下村(2015)なんて、同じ雑誌に掲載された報告なのに、この和名は使われていませんでした。“スナコバンムシ”でググってもヒット無し(2023.10.6)。ほかの検索エンジン使うとちょっと惜しい名前の昆虫がヒットします。
齋藤・佐々木(2023)では、蒲生(1994)の和名を継承し、本種にオニジリスナコバンムシを提唱していました。
職場で言われたように、セロリスが鰓に入り込む過程には謎があります。むしろ、実は東シナ海にひそかな分布域があるのか? この報告を期に、そういった情報があつまっても面白いかもしれません。
この報告にあるように、セロリスについては、Sheppard(1933)という100ページを超える Discovery Reportsの報告があります。お、これはどこかで見ないとと思ったら、コピーがNob!!の書棚にありました。学生時分に入手したの、すっかり忘れていたのです。なんかショック! でも見れて勉強になりました。1970年代にはMoreiraさんという方がセロリスについて何報か論文書かれているようです。netでいくつか入手できます。
小型甲殻類研究者の蒲生重男先生も、やはり興味があったようで、国立極地研に保管されていた標本11個体を調査し、4種を報告されています。このときは「セロリス」というカナ読み表記でしたが、1994年、雑誌『海洋と生物』の表紙にこのうちの1種を紹介し、このグループに「スナコバンムシ」という和名を提唱されているのです。
蒲生(1991)からの孫引きですが、北半球から知られる数種とは以下の5種:
太平洋産1種
Heteroserolis carinata (Lockington, 1877)(体長5 mm) カリフォルニア沖(水深13–55 m)
大西洋産4種
Atlantoserolis menziesi (Hessler, 1970)(体長9 mm) ブラジル寄りの赤道付近(水深834–1493 m)
Atlantoserolis vemae (Menzies, 1962)(体長4.3-6 mm) バミューダ諸島近海(水深834–5024 m)
Serolis agassizi George, 1986(体長3 mm) ノース・カロライナ沖(水深3840–3975 m)
Serolis mgrayi Menzies & Frankenberg, 1966(体長40 mm) 北米ジョージア沖(水深33–40 m)
Nob!!のセロリス愛がとまりません。もっともっと等脚類勉強つづけます!
<文献>
蒲生重男,1991.日本南極観測隊によって採集されたセロリス科 Serolidae の等脚類 (甲殻綱, 等脚目, 有扇亜目) の 4 種類について.横浜国立大学理科紀要. 第二類, 生物学・地学, 38: 1–21.
蒲生重男,1994.南極海産オナガスナコバンムシ(新称)Serolis (Ceratoserolis) meridionalis Vanhöffen, 1914.海洋と生物, 95: 表紙+表紙裏.
Moreira, P.S., 1971. Species of Serolis (Isopoda, Flabellifera) from southern Brazil. Boletim do Instituto Oceanográfico, Sao Paulo, 20: 85–144.
齋藤暢宏・佐々木隆志,2023.水産物に混入していたオニジリスナコバンムシ(新称)(甲殻亜門・等脚目).うみうし通信, 120: 10–11.
Sheppard, E.M., 1933. Isopoda Crustacea Part I. The family Serolidae. Discovery Reports, 7: 253–362, pl 16.
昨日(9/19)の14時ごろ、75件のアクセスあったみたい。こういうのたぶん一人の閲覧だよね? 何か探し物でしたか? 知りたいことわかりましたか?
日ごとのアクセス状況は月単位でみられますが、こういう時間単位の状況がみられるのマレ。ちょっとうれしい。(どのページを見ていたかはわからないんですけどね)
沖縄から2種のウオノエ類が報告されました!(Fujita, 2023)。
(やっぱ ウオノエはやってるのか?!)
ミナミウオノエCymothoa indica Schioedte and Meinert, 1884
体長8.2 mmの幼体が報告されています。宿主はヤクシマイワシAtherinomorus lacunosus (Forster 1801)(SL: 74.3 mm)の口腔。
この報告は本種の北限記録にもなるそうなので、当然日本初記録となります。
日本産何種目のウオノエだっけ? そろそろちゃんと整理しないと、、、 orz
宿主特異性は低いようで、ヤクシマイワシからは初記録ですが、これまでの宿主はMartinら(2016)にまとめられているそうです。
棘状刺毛の種内変異について触れていますが、そもそも幼体なので、DNA調べたからこそ種同定できたのでは? 幼体に本種、あるいは本属の特徴があったら記してほしいです(読み込めてないだけで書いてあるのかな?)
オキザヨリエラヌシMothocya collettei Bruce, 1986
体長13.5 mmの抱卵メスが報告されています。宿主はオキザヨリTylosurus crocodilus crocodilus (Péron & Lesueur 1821)の鰓腔。
この種はオキザヨリにけっこうよくつくようです。Nob!も以前知人からいただきました:
https://nobnob.hatenablog.jp/entry/33125753
『エビ・カニの疑問50』(日本甲殻類学会編, 2017)の口絵6左上の写真も本種ですね。
この論文では近縁種Mothocya affinis Hadfield, Bruce & Smit, 2015との違いが論じられています。
著者のHiroki Fujitaさん(京大に移られたのですね)は、ウオノエの研究に積極的にDNA分析を用い、論文をバンバン出されております。こういう方が活躍されている間は、Nob!!の活動は制限されてしまいますね。息切れされるのをじっと待ちます(苦笑)
論文もっとちゃんと読んだら、ブログ修正するかもです。悪しからず。
※このDiversityって学会誌、8月5日に投稿され、25日に受理され、27日に公開されたみたいです。驚異的ですね。
<文献>
Fujita, H., 2023. Morphological and molecular study of the fish parasitic crustaceans Cymothoa indica and Mothocya collettei (Isopoda: Cymothoidae), with new distribution records. Diversity, 15, 969.
Martin, M.B.; Bruce, N.L.; Nowak, B.F. Review of the fish-parasitic genus Cymothoa Fabricius, 1793 (Crustacea: Isopoda: Cymothoidae) from Australia. Zootaxa 2016, 4119, 1–72.