ウミガメタナイス

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 かなり昔に採集したサンプルで、ずっとペンディングにしてきました。
 いまだに種類はわかりません。(タイトルの「ウミガメタナイス」っていうのは愛称です)

 タナイス類は、Nob!!がもっとも興味のある甲殻類の1つですが、ぜんぜん文献を集めてなく、いまだに着手出来ずにいる高嶺の花です。っていうか怠けているだけですが...

 このタナイスは、アカウミガメの甲上のカメフジツボから採集しました。
 タナイスとしてはかなりゴツくて、「いつか調べたい」って想いだけが残ってはや幾年。

 ウミガメの甲上からは、Hexapleomera robustaという種類が知られているそうですが、この標本がこの種類かどうかわかりません。H. robustaに関する文献未収集なんです。Netで画像検索かけてみましたが、ヒットしませんでした。ちなみにこの種の日本からの記録はないようです。

 こういったシチュエーションで、ウミガメの甲上から採集された特異な甲殻類が何種類か報告されています。このタナイスもそうかも知れません。(違うかもしれませんが...)



ps.先日タナイス研究者のraba様にみて頂いたところ、「現時点ではHexapleomera robustaでいいと思いますが、分類学的な混乱もあり、現在研究中」とのコメントいただきました。





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●●タナイスについて●●

タナイス類はかなり知名度が低いような気がします。
決してめずらしい生き物ではなく、海岸の石のしたや海藻間から、極普通に採集されます。
ですが、多くの種類が数mm程度のサイズのためか、関心が持たれないのかも知れません。
結構図鑑にも掲載されているんですよ。

タナイスっていうのは学名のカナ読みですが、語源はロシアのドン川の古名に由来するそうです。が、なぜそういった名前がついたかはわかりません。
多くは普通1 cm未満、数mm程度の小型甲殻類です。最大種はミンダナオ島南東沖の水深5,500m付近からは知られるエンマノタナイスGigantapseudes maximus (Gamo, 1984)で、58~75 mmに達するそうです。日本海溝にも居るそうです。

世界から500種が知られています(データ古いです)。
日本国内のタナイス相については、最近、九州市立自然史・歴史博物館の下村通誉博士とキム・ラーセン博士(デンマーク人)による一連の報告がなされ、これまでに調査されなかった深海や南方海域の種類が調べられて、90種以上の生息が確認されました。
http://www.kmnh.jp/inishie/detail.php?seri=93

それまでは、わずか17種が知られるのみでした。
http://research2.kahaku.go.jp/ujssb/search?KINGDOM=Animalia&PHYLUM=Arthropoda&SUBPHYLUM=Mandibulata&CLASS=Crustacea&SUBCLASS=Malacostraca&INFRACLASS=Eumalacostraca&SUPERORDER=Peracarida&SORDER=Tanaidacea

国内のタナイス研究は、最近活発になって来たような印象がありますが、海外ではかなり前から盛んなようです。
http://www.usm.edu/gcrl/tanaids/




[参考文献]
*1)Caine, E. A. 1986. Carapace epibionts nesting loggerhead sea turtles: Atlantic coast of U.S.A. Journal of Experimental Marine Biology and Ecology, 95: 15-26.
*2)Gramentz, D. 1988. Prevalent epibiont sites on Caretta caretta in the Mediterranean Sea. Naturalista sicil., E. IV, 12(1-2): 33-46.
3)Larsen, K. & Shimomura, M. 2006. Tanaidacea (Crustacea: Peracarida) from Japan. I. Apseudomorpha from the East China Sea, Seto Inland Sea, and Nansei Islands. Zootaxa, 1341: 29-48.
4)Larsen, K. & Shimomura, M. 2007. Tanaidacea (Crustacea: Peracarida) from Japan. II. Tanaidomorpha from the East China Sea, West Pacific Ocean and the Nansei Islands. Zootaxa, 1464: 1-43.
5)Larsen, K. & Shimomura, M. (eds.) 2007. Tanaidacea (Crustacea: Peracarida) from Japan. III. The deep trenches; the Kurile-Kamchatka Trench and Japan Trench. Zootaxa, 1599: 1-149.
6)布村 昇.1995.タナイス目.In西村三郎編,原色検索日本海岸動物図鑑(II),pp.233-238.保育社,大阪.
7)布村 昇.1997.タナイス類.In日高敏隆監修・奥谷喬司・武田正倫・今福道夫編集.日本動物大百科第7巻:無脊椎動物.pp. 134,139.平凡社,東京.
8)Sieg, J. 1983. Crustaceorum Catalogus, 6 Tanaidacea. In Gruner, H.- E. & Holthuis, L. B. (eds.), pp. 1-552. Dr. W. Junk Publishers, Hague.
*:未収集文献

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[2017.11.29加筆]


この小型甲殻類、新種だったようです。
論文が出ました!

ウラシマタナイス
Hexapleomera urashima Tanabe, Hayashi, Tomioka, & Kakui, 2017

論文はこれから拝読します(謝)


<引用文献>
Tanabe Y, Hayashi R, Tomioka S, Kakui K (2017) Hexapleomera urashima sp. nov. (Crustacea: Tanaidacea), a tanaidid epibiotic on loggerhead sea turtles at Yakushima Island, Japan. Zootaxa 4353: 146–160.