速報! フナムシ問題解決?!

 

図 トライフナムシcomplex 3種(Ariyama & Hiki, 2024より)、AM, 交尾針; P1・P2, 第1・第2胸脚; PL2, 第2腹肢。どこかから叱られたら削除します。

 

海岸にわらわらいるフナムシLigia exotica Roux, 1828。

日本産のフナムシが実は3種だったという論文が公表されました(Ariyama & Hiki, 2024)。

 

有山さんといえば著名なヨコエビ研究者ですが、ガザミで学位とられているし、ヨツハモガニやシャコ、コツブムシで論文書かれているし、甲殻類大好きな先生のようです。

 

 

そもそも日本には10種のフナムシ属が生息していますが(布村・下村, 2017ab)、この論文ではそのうちのザ・フナムシに焦点を当てたもの。

東京湾、大阪湾、宍道湖島根県)などの標本を精査し、2新種が含まれていることを明かしています。

 

トライフナムシLigia exotica Roux, 1828(和名改称)

  国内の分布 大阪~兵庫、島根県

  特徴 オスの第2腹肢の交尾針先端に拡張部がない。第1触角と尾肢が長く、オス第1胸脚前節前縁に拡張部を持つことが特徴とされてきた。

  ”Ligia exotica artificial-coastal form”とされています。

フタマタフナムシLigia furcata Ariyama & Hiki, 2024

  国内の分布 江の島(神奈川)、千葉(?)、東京

  特徴 オスの第2腹肢交尾針先端に角ばった拡張部あり。オス第1胸脚前節前縁が二叉状。またメス第2・第3胸脚腕節がトライフナムシに比べて細い。

アオホシフナムシLigia laticarpa Ariyama & Hiki, 2024

  国内の分布 大阪、和歌山、淡路島(兵庫)、千葉(?)

  特徴 オスの第2腹肢交尾針先端に丸い拡張部あり。オス第1胸脚前節前縁が二叉にならず、腕節は太いかあるいはやや膨れる。メス第1胸脚長節が弱く広がる。またオスの体背面に青い斑紋が分布する。

  ”Ligia exotica natural-coastal form”とされています。

 

大阪市立自然史博物館のHPでも紹介されています:

https://omnh.jp/archives/11330

 

 

なお、既知の日本産10種は以下の通りですが、このうちのシンジコフナムシは今回の論文(Ariyama & Hiki, 2024)によってトライフナムシのジュニアシノニムになっています。なので現在の日本産フナムシ属は11種。

1.オガサワラフナムシLigia boninensis Nunomura, 1979

  タイプ産地は小笠原諸島母島沖村。森の小道にみられる。

2.キタフナムシLigia cinerascens Budde-Lund, 1885

  北海道に多く、本州・四国の波あたりの弱い内湾、転籍海岸や干潟の周辺に生息。

3.ダイトウフナムシLigia daitoensis Nunomura, 2009

  タイプ産地は沖縄県北大東島の沖縄海岩礁。南北大東島に分布。

4.フナムシ(現トライフナムシLigia exotica Roux, 1828

  タイプ産地はフランスのマルセイユ。世界の温帯域から広く報告される。日本でもっともふつうにみられるフナムシ属で、本州・四国・九州・薩南諸島の海岸・岩礁の汀線上に生息。

  WoRMSではMegaligia亜属が設定されています。

5.ハチジョウフナムシLigia hachijoensis Nunomura, 1999

  タイプ産地は伊豆諸島八丈島の汐間海岸。潮間帯から海岸林にみられる。

6.ミヤケフナムシLigia miyakensis Nunomura, 1999

  タイプ産地は伊豆諸島三宅島。潮間帯から飛沫帯にみられる。

7.リュウキュウフナムシLigia ryukyuensis Nunomura, 1983

  タイプ産地は沖縄県宮古諸島伊良部島良浜。鹿児島県奄美諸島沖縄諸島宮古諸島八重山諸島尖閣諸島に分布。

シンジコフナムシLigia shinjiensis Tsuge, 2008

  タイプ産地は島根県松江市玉湯の宍道湖湖畔。中海、大橋川、神西湖に生息。

  トライフナムシのジュニアシノニムとされる(Ariyama & Hiki, 2024)

8.ナガレフナムシLigia torrenticola Nunomura, 2011

  タイプ産地は小笠原諸島父島初寝浦川。兄島にも分布。

9.アシナガフナムシLigia yamanishii Nunomura, 1990

  タイプ産地は小笠原諸島父島初寝浦。岩礁の高潮線付近の石の裏などにみられる。

 

 

 

<文献>

Ariyama, H., & Hiki, K., 2024. A morphological and molecular study of Ligia exotica Roux, 1828 (Crustacea: Isopoda: Ligiidae) from Japan, with descriptions of two new species. Zootaxa. 5433(4): 451-486.

布村 昇・下村通誉,2017a.日本産等脚目甲殻類の分類(47):ワラジムシ亜目・フナムシ科①・フナムシ属①.海洋と生物, 232: 506-511.

布村 昇・下村通誉,2017b.日本産等脚目甲殻類の分類(48):ワラジムシ亜目・フナムシ科②・フナムシ属②.海洋と生物, 233: 643-646.