トウヨウウオジラミ

イメージ 1

トウヨウウオジラミCaligus orientalis Gusev, 19511と思います。雄です。(腹側)
小三郎Jr.さんからいただきました。四日市港産のボラから得られたそうです。漁船に飛び込んできた魚だそうです。
冷凍サンプルでいただき、解凍時は斑点が分布していたり、地色ももっと赤っぽく、カラフルだったのですが、ホルマリン固定したら、あっという間に脱色しちゃいました(やっちまいました・悲)。

淡水域にも、海域にもみられる、分布域の広い寄生虫です。
宿主となる魚種も、長澤ほか(2010)によれば、コイ、ゲンゴロウブナ(=カワチブナ)、フナ類の1種(=マブナ)、ウグイ、ワカサギ、イトウ、ニジマス、メナダ、ナンヨウボラ(=アカメ)が挙げられています。Ho & Lin (2004)には宿主のひとつにボラが挙げられています。
学生の頃、KI先生から「本種は淡水域から海域にかけて分布し、分布域によって宿主を乗りかえる」という興味深いお話をうかがったことがあります(20年以上前なので、かなりうろ覚えです...謝)。

台湾では養殖魚8種が宿主として報告され、天然魚からの報告はないそうです(Ho & Lin, 2004)。実に興味深いです。

台湾の報告によりますと、本種はウオジラミとしてはめずらしく(?)、抱卵メスよりもオスのほうが大きくて目立ち、性比もオスにややかたよっているそうです(Ho & Lin, 2004)。今回の個体もオスです。
ただ、小三郎Jr.さんの観察では、メスのほうが大きく、性比についても、1回目はオス1匹、2回目はつがい、3回目はメス3匹、オス2匹だったそうです。場所が違うと生態も違うのですかね。興味深いです。

養殖魚へ被害をもたらす、病害虫だそうです(長澤ほか, 2010)。本種の生物学特性については、Nagasawa(2004)にまとめられているそうです。(この文献未収集)



<引用文献>
Ho, J.-S. & Lin, C.-L. 2004. Sea lice of Taiwan (Copepoda: Siphonostomatoida: Caligidae). 388 pp. The Sueichan Press, Taipei.
*Nagasawa, K. 2004. Sea lice, Lepeophtheirus salmonis and Caligus orientalis (Copepoda: Caligidae), of wild and farmed fish in sea and brackish waters of Japan and adjacent regions: a review. Zool. Stud., 43: 173-178.(未収集文献)
長澤和也・上野大輔・Danny Tang.2010.日本産魚類に寄生するウオジラミ属カイアシ類の目録(1927-2010年).日本生物地理学会会報,22:103-122.