グソクムシ科メモ、海の日の記念に

海の日の休暇を利用して、何か海の生き物について調べようかと、懸案事項だったグソクムシ科について調べはじめました。結局1日では調べ切れなかったので、近く加筆いたします。

近日公開、乞うご期待!(ってほどのものではないけどね)

 

 

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ちなみに当ブログでは、以下のようなグソクムシ関連のページがあります;

・ドウケツグソクムシ https://nobnob.hatenablog.jp/entry/30906578

・はじめてのグソクムシ(嬉!) https://nobnob.hatenablog.jp/entry/32886222

・日本のグソクムシ類 https://nobnob.hatenablog.jp/entry/33009414

グソクムシの1種(くまの灘産) https://nobnob.hatenablog.jp/entry/34183704

・メナガグソクムシ https://nobnob.hatenablog.jp/entry/34314746

・タラノシラミ https://nobnob.hatenablog.jp/entry/2020/01/06/132246

 

Genus グソクムシAega Leach, 1815

  35種、うち日本産4種

Genus トンガリグソクムシAegapheles Bruce, 2009

  17種、うち日本産2種

Genus ドウケツグソクムシAegiochus Bovallius, 1885

  38種(WoRMSでは38種とされるが、A. tumida (Nunomura, 1988)はドウケツグソクムシA. spongiophila (Semper, 1867)のシノニムとする見解(Saito & Saito, 2011)を支持)、うち日本産4(?)種

Genus Alitropus H. Milne Edwards, 1840

  1種、Alitropus typus H. Milne Edwards, 1840のみ。日本未知。

Genus Epulaega Bruce, 2009

  5種、日本未知

Genus ウオノシラミ属Rocinela Leach, 1818

  42種、うち日本産7種。タラノシラミRocinela maculata (Schioedte & Meinert, 1879)など

Genus オニグソクムシSyscenus Harger, 1880

  9種、うち日本産2種

Genus Xenuraega Tattersall, 1909

  2種、うち、Xenuraega bythionekta Shimomura & Bruce, 2019は日本産で、鹿児島県沖永良部島北西沖(27°22.90´N, 128°23.70´E)から報告される(この種は『海洋と生物』の連載で紹介されていません。原稿執筆時には間に合わなかったのかも?)。

 

  • 属の検索表については、Bruce(1993, 2009)、布村・下村(2020a)によって作成されている。

 

  •  トンガリグソクムシAegaphelesとドウケツグソクムシAegiochusはBruce(2009)によって整理されるまではグソクムシAegaとされていた。この3属の違いは以下のとおり(布村・下村, 2020aを参考にしました):

・ドウケツグソクムシ属 第1触角に平たい節はない;顎脚鬚の第5節は縦長で、第4節と融合しない;額葉は後方が狭い。

・トンガリグソクムシ属 腹尾節末端は尖る;尾肢内肢に明瞭な欠刻がある;尾肢内・外肢は同一平面上にない;第1触角第1・第2節は広く平たい;顎脚鬚の第5節は幅広で太く短く、第4節と癒合することがある。

グソクムシ属 尾肢内・外肢は同一平面上にある;尾肢内肢に明瞭な欠刻がない;腹尾節末端はさまざま;第1触角第1・第2節は広く平たい;顎脚鬚の第5節は幅広で太く短く、第4節と癒合することがある。

 Bruce(2009)による検索表はわかりにくかったんですが、布村・下村(2020a)にそれをもとにした日本語の検査表があって助かりました。でもグソクムシ属はちょっと難しい。

 また、Epulaega属も旧来のグソクムシ属型で、ドウケツグソクムシ属に似ますが、Rostrum(頭部前縁中央の突出部)が小さく、背面から見えない;顎脚鬚の第5節が小さく、第4節の幅の0.3倍未満という特徴があるようです。日本未知ですが、この先日本からもみつかるかも。

 

  • ウオノシラミ属Rocinelaは種数が多く、外形は旧来のグソクムシ属(グソクムシ属、トンガリグソクムシ属、ドウケツグソクムシ属、Epulaega属)に似るが、顎脚髭が3節(稀に2節)でることが大きくことなる。旧グソクムシ属ではこれが5節。頭部前縁に突起を形成する種があるが、これは雌雄差が大きいようである(例えばRocinela resima Bruce, 2009、タイプ記載のFig.119(p185))。ただ、Bruce(2009)の雌雄差の項目では頭部前縁については触れられていない。

 

  • 『日本産等脚目甲殻類の分類』。雑誌 海洋と生物に2010年から連載されていた論文で、No.62~64に日本産グソクムシ科が掲載されています(布村・下村, 2020a-d)。日本語でグソクムシ科を包括した唯一の論文なので、大変貴重な情報ですが、以下の点についてNob!!の勉強不足から、ちょっと注意が必要なのではないかと思っています。

・メナガグソクムシ この連載ではAegapheles antillensis (Schioedte & Meinert, 1879)の学名が用いられていますが、Bruce(2004)は新日本動物図鑑(椎野, 1965)の同定を疑問視していて、日本のトンガリグソクムシ属はAegapheles excisa (Richardson, 1910)とヤマトグソクムシAegapheles japonica (Bruce, 2004)の2種であると指摘しています。Nob!!はこの見解を支持し、和名メナガグソクムシA. excisaが継承するのが無難ではないかと思っています。両種の違いについて、Bruce(2004)は、額葉(A. excisadehsでは細長く、ヤマトグソクムシでは小さく四角い)、第1~第3胸脚長節の棘状刺毛の配置、体サイズ(A. excisadehsでは3.5 cm前後、ヤマトグソクムシでは5~6 cm)などを挙げています。なおBruce(2004)はそれまでAegapheles antillensisとされていたものに6種が含まれていたことを報告し、真のA. antillensisとはカリブ海とメキシコ湾に分布する種としています。

Aegiochus Bovallius, 1885 和名をドウケツグソクムシ属としていますが、新称とはしてなく、出典も明記していません。

Aegiochus vigilans (Haswell, 1881) Bruce(2009)ではメダマグソクムシAegiochus giganteocula Nunomura, 1988のシニアシノニムとされているが(WoRMSもこの見解を支持)、これらには差異があるとし、別種の可能性が示唆されています。オーストラリアの種で、よく読むと日本からの報告があるわけではないみたいです。和名はありません。

 

 

 

引用文献

Bruce, N. L., 1993. Redescription of the overlooked crustacean isopod genus Xenuraega (Aegidae, Flabellifera). Journal of the Marine Biological Association of the United Kingdom, 73: 617–625.

Bruce, N. L., 2004. Reassessment of the isopod crustacean Aega deshaysiana (Milne Edwards, 1840) (Cymothoida: Aegidae): a world-wide complex of 21 species. Zoological Journal of the Linnean Society, 142(2): 135–232.

Bruce, N. L., 2009. The Marine Fauna of New Zealand: Isopoda, Aegidae (Crustacea). NIWA Biodiversity Memoir, 122: 1–252.

布村昇・下村通誉,2020a.日本産等脚目甲殻類の分類(62)ウオノエ亜目⑧ウオノエ上科③グソクムシ科①.海洋と生物, 247: 175–179.

布村昇・下村通誉,2020b.日本産等脚目甲殻類の分類(63)ウオノエ亜目⑨ウオノエ上科④グソクムシ科②.海洋と生物, 248: 267–274.

布村昇・下村通誉,2020c.日本産等脚目甲殻類の分類(64)ウオノエ亜目⑩ウオノエ上科⑤グソクムシ科③.海洋と生物, 249: 399–405.

布村昇・下村通誉,2020d.日本産等脚目甲殻類の分類(65)ウオノエ亜目⑪ウオノエ上科⑥グソクムシ科④オニグソクムシ属・オナシグソクムシ科オナシグソクムシ属.海洋と生物, 250: 487–492.

Saito N., & Saito, T., 2011. New record of Aegiochus spongiophila (Semper) (Isopoda: Aegidae), inhabiting the hexactinellid sponge Euplectella oweni Herklots & Marshall from off Makurazaki, southern Kyushu, Japan. Crustacean Research, 40: 33–40.

椎野季雄,1965.めながぐそくむし.岡田 要・内田清之助・内田 亨(監修),新日本動物図鑑(中).北隆館,東京.

Shimomura, M. & Bruce, N.L., 2019. A new species of the mesopelagic isopod genus Xenuraega Tattersall, 1909 (Crustacea: Isopoda: Aegidae) from Japan, the second species in the genus. Zootaxa, 4683 (3): 431–438.