【海の日企画】ウキウオジラミ論文2編

海の日ぃ~ in 2024

 

某2大学会の会長を務めるSO先生から、「Nob!!さんウキウオジラミ好きなんだね。Netみたよ。関係論文紹介するよ」って、(ちょっと前に)2論文を送っていただきました。恐縮です。

読まなきゃ読まなきゃと、時間たってしまいましたが、やっとアブストラクト読めたので、忘れないようにブログにあげておきます。海の日らしいでしょ! 読み間違いなどありましたらご指摘ください。

 

 

Ohtsuka ら(2020)Abstract:ウキウオジラミCaligus undulatus Shen & Li, 1959 はインド-西太平洋および大西洋の沿岸および外洋域プランクトンサンプルから広く報告されている。これまで、宿主魚類は知られていない。このカイアシ類は主に寄生性のグループであるが、本種は動物プランクトンとしてのみ発見されている。予想外に、2019年10月、瀬戸内海のサッパSardinella zunasi (Bleeker, 1854)からC. undulatusが発見された。このウオジラミの幼体(カリムスchalimus)と成体が寄生虫として宿主から発見された。この発見は、本種がほかの“プランクトン性”ウオノシラミ類と同じ生活史を持ち、成体の段階で宿主を切り替えプランクトンに移行する可能性を示唆している。ここで、ウキウオジラミ・グループC. undulatus groupを、プランクトン性として知られている5種から、属内に新設した。ウオノシラミ類の生活史の変異に関するいくつかの仮説についても簡単に考察した。

 

Kondo ら(2024)Abstract:2019年以前、ウキウオジラミCaligus undulatusの成体はプランクトンサンプルからのみ知られ、宿主魚類は不明であった。2019年、本種の第1宿主としてサッパSardinella zunasiが瀬戸内海から記録された。本研究ではプランクトン群集内におけるウキウオジラミ成体の生物学と生態学を調査することを目的として、2020年3月から2021年に11月にかけて瀬戸内海周辺海域を調査した。ウオジラミは8月から1月、特に10月から12月に出現し、2020年11月30日に最高値(10.5個体/1000m3)を記録した。すべてのウキウオジラミの後期ノープリウス期が宿主魚で発見され、それらは ウオジラミ属で知られる典型的な生活史パターンを表していた。プランクトンと寄生虫とで性比に有意差はなかった。プランクトンと寄生虫における抱卵メスの出現率は、それぞれ68%と46%であった。卵嚢中の卵数は寄生虫の成体メスのほう(平均± SD: 16.9 ± 8.6)がプランクトン(10.4 ± 10.8)よりも有意に多かった。これらのデータは、成体メスは宿主から離れ、摂食せずに卵を産み続けたことを示唆している。サッパの産卵のための汽水域への季節移動は、成熟したウオジラミ類を魚体から分離させ、子孫の汽水耐性を低下させる効果が考えられる。

 

 

<文献>

Ohtsuka, S., Nawata, M., Nishida, Y., Nitta, M., Hirano, K., Adachi, K., Kondo, Y., Venmathi Maran, B. A., & Suárez-Morales, E., 2020. Discovery of the fish host of the ‘planktonic’ caligid Caligus undulatus Shen & Li, 1959 (Crustacea: Copepoda: Siphonostomatoida). Biodiversity Data Journal, 8, e52271.

Kondo, Y., Ohtsuka, S., Nawata, M., Nishida, Y., Komeda, S., Iwasaki, S., Aneesh, P. T., Balu Alagar Venmathi Maran, B. A. V., 2024. Habitat shift of adult Caligus undulatus (Copepoda: Siphonostomatoida: Caligidae) from host fish to plankton in response to host behavior. Diseases of Aquatic Organisms, 157:81-94.