<備忘録>伊予灘におけるタイノエの長期調査結果

タイノエに関するすごい論文がでました(Ohtaniほか, 2021)。

論文の緒言にありましたが、タイノエって結構昔からしられている割に、生物学的あるいは生態学的知見って断片的なんですよね。

 

https://nobnob.hatenablog.jp/entry/32809789

 

Abstractと、ちょこっと読みかじった感じでは、次のような内容です:

2003年1月から2007年12年にかけて毎月、愛媛県伊予灘)で捕獲されたマダイ4,623尾について、寄生性等脚類Ceratothoa verrucosaタイノエの長期寄生虫調査が実施された。漁獲されたマダイは当歳魚から14歳魚であった。このうち寄生がみられたのは当歳魚から6歳魚、7歳魚以上では寄生は見られなかった。寄生率は宿主が当歳から5歳の場合、12.2%から21.2%の範囲であったが、6歳では3.4%に減少した(トータルでは18.6%:マダイ862尾で寄生が確認)。得られたタイノエは雄(7.7-36.6 mm)、雌(22.4-50.6 mm)で、体サイズは宿主の尾叉長と相関関係にあった。このことから、タイノエは宿主が当歳時に寄生し、宿主とともに成長し、寿命は最大6年と推定された。ほとんどの場合、タイノエは宿主口腔内壁に雌雄のペアで付着していた(最大のペアは雄36.6 mm・雌50.6 mm)。また、寄生を受けたマダイは上顎の変形と成長遅延がみられたが、寄生に関連した死亡の証拠はみられなかった。タイノエの主な繁殖期は夏であり、この時期、雌の育房にマンカ期が確認された。またこの論文ではChoricotyle elongataマダイヤツデムシ(扁形動物:単生綱)とタイノエの超寄生についても報告されています。

 

 

 

<文献>

Ohtani, T., Kawamoto, I., Chiba, M., Kurono, N., Matsuoka, S., & Ogawa, K., 2021. Ceratothoa verrucosa (Isopoda: Cymothoidae) infection in the buccal cavity of red seabream caught in Iyo-Nada, Western Japan, with some notes on its co-infection with Choricotyle elongata (Monogenea: Diclidophoridae). Fish Pathology, 56 (2): 43-52.