イワシノコバン

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イワシノコバンNerocila phaiopleura Bleeker, 1875と思います。

Nerocila属はBruce(1987)によって、オーストラリア産の8種について分類学的整理がなされています。
写真の標本は、●第5-第7胸節の基節板は先端が尖り、各胸節より長い、●第7胸脚は第6胸脚とほぼ同大、●第1・第2腹節の下端突起は細長い、●尾肢外肢は直線的で細長いなどの特徴があり、N. phaiopleuraに同定されます。
ただ、Nerocila属は世界から40種以上が知られるので(↓)、厳密には、オーストラリアで知られていない種とも比較しなくてはなりません。なお、日本産の種類についてはYamauchi先生が現在調査中という噂を聞いています。
http://www.marinespecies.org/aphia.php?p=taxdetails&id=118417

エビ類を研究されているYH博士からいただきました。釣りびとから同定依頼を受けたそうです。横浜で得られたマアジについていたそうです。マアジへの寄生事例は初記録かもしれません。

イワシノコバンは三浦半島の金田周辺で、マイワシ、サッパ、コノシロなどへの寄生が確認され、特にマイワシへの寄生被害について報告されています(三谷, 1982)。御前崎港で釣獲されたマイワシへの寄生も確認されています(齋藤・早瀬, 2000)。
オーストラリアでは、Liza argentea(ボラ科)、Cnidoglanis macrocephalus(ゴンズイ科)、Engraulis australis(カタクチイワシ科)が宿主として報告されています。

YH博士からは、同時にとれた(持ちこまれた)ヒゲブトウオノエ属Ceratothoaの標本も送られてきましたが、こちらは幼体だったので、種の同定はできませんでした。この属は成体でも同定の難しいグループです。このグループについてもYamauchi先生が研究されていて、2009年のTCS in Tokyoで発表されていました。近々論文もだされるようです(もう出たのかな?)


[参考文献]
1)Bruce, N. L. 1987. Australian species of Nerocila Leach, 1818, and Creniola n. gen. (Isopoda: Cymothoidae), crustacean parasites of marine fishes. Records of the Australian Museum, 39: 355-412.
2)三谷 勇.1982.寄生虫Nerocila phaeopleura Bleeker によるマイワシ肥満度の変化について.日本水産学会誌,48(5):611-615.
3)齋藤暢宏・早瀬善正.2000.三保海岸に打ち上げられたイワシノコバンのエガトイド幼体.伊豆海洋公園通信,11(10):2-6. 」

1)と2)はweb上からダウンロード出来ます。
1) http://australianmuseum.net.au/Uploads/Journals/17680/174_complete.pdf
2) http://rms1.agsearch.agropedia.affrc.go.jp/contents/JASI/pdf/society/25-1432.pdf





なお、採集者から質問があったようです(直接的にはYH博士からのリクエスト): 食べても大丈夫かどうか?

魚といっしょに誤食ってことでしょうか? 古い文献にウオノエを食用にするっていう記述があるとか聞いたことがあるし、そういったゲテモノサイトを見たこともあるので、害は無いと思います。(加熱は必要と思います)
文献とかサイトをもう一度調べて加筆します(そのうち)