すっげー論文がでました。ずーっとNob！がやってみたかったテーマ！
ウオノエ遊泳期の季節消長をきちんと種同定して追いかけた論文です！
わくわくが止まりません。
広島湾の定点（能美島西岸地先）において、2020年10月から2021年12月の期間、月一でライトトラップを設置し、採集された遊泳期のウオノエ類の種組成を追跡した研究です。
ライトトラップはFloyd ら(1984)による仔稚魚採集用に開発されたもので、1回30分のライト点灯で動物プランクトンを採集したそうです。そのサンプルを氷蔵で実験室に持ち帰り、ウオノエ類の幼体を抽出したと書かれています。
この調査によって得られた全ての個体についてDNA（COIと16S rRNA）を調べ、種同定したとのこと。これだけでも結構な作業のはずです（あとコスト的にもかなりな、、、）。
この研究では613個体のウオノエ類が得られ、その内訳は、ブリエラヌシMothocya parvostis Bruce, 1986が596個体(マンカ573、幼体23)、タイノエCeratothoa verrucosa (Schioedte & Meinert, 1883)が12個体(マンカ11、幼体1)、およびナミオウオノエCeratothoa carinata (Bianconi, 1869)が 5個体(すべてマンカ) で、ブリエラヌシ（サヨリヤドリムシ類の1種）が97％を占めていました。
周年調査の結果、ブリエラヌシは6月から12月に繁殖すると予想され、毎年2回の繁殖ピークがあり、タイノエとナミオウオノエは、それぞれ6月、7月、9月、および9月と10月が繁殖期とみられました。ブリエラヌシとタイノエについては既報の繁殖期と、今回の結果（遊泳個体の出現時期）がほぼ一致したとのことです！
なお、瀬戸内海からは過去の研究から7種のウオノエ類が記録されていて、このほか、サッパノギンカAnilocra clupei Williams and Bunkley-Williams, 1986、ホラアナゴノエElthusa sacciger (Richardson, 1909)、ウオノコバンNerocila japonica Schioedte & Meinert, 1881とイワシノコバンN. phaiopleura Bleeker, 1857が知られているそうです。613個体しらべて3種しか出現していなかったというのは、案外想定外の結果だった(？)かも知れません。
この論文では、「ウオノエは形態で同定できるのはメス成体のみで、オスや幼期はDNAでしか同定できない」って言い切っているところが潔い！
そのスタンスなので、各遊泳個体の形態的特徴には、一切触れておりません。ウオノエ類の幼期は形態情報乏しいので、せっかくDNAで種同定できたのだから、形態的な特徴記述して貰えると、後進の研究者が助かるように思いました。まぁ、この論文の主旨からはずれるからしかたないけど。
Saitoら(2014)でもタイプ毎の季節省長に触れられていて、各タイプともおおむね6月から11月に出現しているのは、このFujitaら（2023）と同じ傾向で興味深く思いました。なので、Saitoら(2014)のマンカの3タイプと、Fujitaら（2023）によって同定された3種との整合がわかれば面白いのになと感じています。
ライトトラップについては、外寸については、記述されていますが、詳細は写真に書かれ、ライトの仕様は、図の説明中への記述されています（ちょっとわかりにくい）。どこからプランクトンがトラップに入るのかよく分からないし、そもそも、どうやって設置するものなのかも分からない。海面に浮かすのですかね？ 出典では詳述されてるんですかね？(文献未収集 m(_ _)m)
また加筆するかも知れません。
＜文献＞
Hiroki Fujita, Kentaro Kawai, Diego Deville, Tetsuya Umino, 2023. Quatrefoil light traps for free-swimming stages of cymothoid parasitic isopods and seasonal variation in their species compositions in the Seto Inland Sea, Japan. International Journal for Parasitology: Parasites and Wildlife, 20: 12–19.
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2213224422001080?via%3Dihub
