尖頭巾戎(トガリズキンウミノミ科の1種)

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大学の先生を通じて、水産物に混入した甲殻類の同定依頼がまいりました。何事も経験と思い、お受けしましたが、なんと海外からの輸入水産物でした。
 最初の依頼メールに添付してあった写真は、なんか頭がとんがったウオノエの幼体のような個体がわんさか写っていて、「なんじゃこりゃぁ」という感じで大変興味を魅かれたのでした。
 
 結論からいうと、混入物はクラゲノミ(端脚類)の一種で、
Tullbergella cuspidate Bovallius, 1887 という種類でした。日本からの記録はないと思います。(すくなくともNob!!ははじめてみました)
和名はなく、あえてカナ読みすれば「ツルベルゲラ・カスピダタ」
ちなみに中国名は「尖頭巾戎」のようです。(webにそういうサイトがありました)
 
乾燥の加減なのか、体型が背腹にやや押しつぶされ、色合いもウオノエっぽかったのですが、顕微鏡でみると、眼も口もぜんぜん等脚類ではありませんでした。
 ぱっとみた印象として、第1・第2胸脚の形態と、第3腹節側板後端が大きく後方に突出するのが特徴的なので、これを頼りに絵合わせし、あとからちゃんと検索して同定しました(くどくど分かりにくい文でスミマセン)
 
Hyperiid Amphipods (Amphipoda, Hyperiidea) of the World Oceans』(Vinogradovほか, 1996)によれば、「レアな種類であり、これまで、インド-西太平洋(マレー諸島、グレート・バリア・リーフ、インド洋北東部)の海表付近に分布する」と記されています。ただ、学名をweb検索すると、結構いろんなサイトがヒットするし、新鮮な状態の写真もわりとみられるので、そこそこ普通の種なのかも知れません。あるいはNob!!が不勉強なだけで、なにかトピックスをもった種類なのかもしれません。
 浮遊性の種類です。観察した個体には仔をもつものもありました。生態情報は分かりませんが、他のクラゲノミ類同様、周年再生産しているのだと思います。また、採集状況から群れをなすクラゲノミ類であることも間違いないでしょう。
 今回の混入は、たまたまこの種類が群をなす海域で操業されたのだと思います。
 
 浮遊性端脚類自体は食用にはならないと思いますが、チリモンとしてシラスに混入する事も多いですし、食感に違和感を生じるかもしれませんが、衛生的には問題ないと思われました。
 
謝辞:貴重な生物を同定する機会を与えていただき感謝いたします。不適切な記述がありましたら、即刻修正いたしますの、遠慮なくご指摘ください。
 
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