王英ミジンコ

今日、王英さんから、サンゴに着く珍しいカイアシ類(ハルパクチクス目)を見せていただきました。ベリーさんくすデス!
(詳細は後ほど)

ということで、皆さん、メリークリスマス!!
 
 
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ということで、写真をup。こういうカイアシ類でした。体長0.4mmです。
 
Tegastidae科カイアシ類(ハルパクチクス目)でした。イシサンゴ類共生性カイアシ類(Asterocheridae アステロチェレス科やLichomolgidae リコモルグス科)ではありませんでした。
 ハルパクチクス目の中では特異な形のグループで、多くの関連テキストに絵がでているカイアシ類です。なので一目でそれとわかりラッキーでした(実はHI博士に最終確認していただきました、、、ありがとうございました)。
 
本科は体が側偏し、輪郭が丸っこく、一件ヨコエビのようなシルエットであり特徴的です。実物を見られて、Nob!!としても大変勉強になりました。
 
本科は682+2亜種からなります(webサイト:The World of Copepods参照)。このうち330種は、ハルパクチクス目カイアシ類の教科書(Lang, 1948、ただしドイツ語)に記載があります。また、「原色検索日本海岸動物図鑑(Ⅱ)」(蒲生, 199586, fig. 21-63IN)には、本邦産の種類としてSyngastes pietschemanni Pesta, 1932ヒラアシヨコミジンコが掲載され、本科には和名「ヨコミジンコ科」が提唱されています。(図鑑には本邦産はヒラアシヨコミジンコ1種のみとされていますが、今回のカイアシも本当にこの種かどうかは解剖して確認しないと分かりません。日本から報告があるのがこの種のみって意味なんだと思っています)
 
Tegastidae科カイアシ類の属とその種数
Genus Arawella Cottarelli & Baldari, 1987・・・<1種>
Genus Feregastes Fiers, 1986・・・<1種>
Genus Parategastes Sars G.O., 1904・・・<8+2亜種>
Genus Smacigastes Ivanenko & Defaye, 2004・・・<3種>
Genus Syngastes Monard, 1924・・・<26種>
Genus Tegastes Norman, 1903・・・<43種>
 
 
王英さんが購入されたエダコモンという石サンゴ上で繁殖したそうです。このサンゴ、購入後しばらくは元気でしたが、何ヶ月後から衰弱していき、気が付いたらこのカイアシがわんさとはびこっていたとのこと。
 気になるのは、1)カイアシがサンゴを衰弱させたのか? 2)サンゴが衰弱したからカイアシが繁栄できたのか? 3)そもそもこのカイアシはどこから来たのか? ということのようです。
 3)については、購入後しばらくサンゴは元気で、カイアシもみられなかったので、サンゴ由来ではないと考えられています。
 
もうひとつ興味深いのは、水槽内には何種類ものサンゴが飼育されていますが、他のサンゴにはカイアシ見られないうことです。
 HI博士によれば、このカイアシの仲間を、大型海藻の調査で海藻の基部から見たことはあるが、個体数は多くなかったということです。また、海藻以外にも、結構いろいろな環境下で見ることはあるとのこと。
 
もう一つ興味深いのは、王英さんの熱心なweb調査によって、国内で他に1件、海外でも1件、アクアリスト飼育によるエダコモンやコモンサンゴ類で、この仲間のカイアシが繁栄したという事例を発見されたこと。石サンゴと相性がいいのですかね? 日本の事例では、環境を整えたらサンゴの活性があがり、カイアシも姿を消したそうです。
 
王英さん宅の水槽内での事例については、今後も継続調査がなされるそうです。続報をこうご期待!! (下記リンクの「エダコモンとナニカ」「エダコモンとテガステス」というタイトル記事)
 
 
<引用文献>
1)蒲生重男.1995.ソコミジンコ目.In西村三郎編,原色検索日本海岸動物図鑑(II)pp.57-112保育社,大阪.
2Lang, K.  1948.  Monographie der Harpacticiden.  Nordiska Bokhandeln, Stockholm. 2 vols., 1682 pp., 607 figs.
 
<関連サイト>
The World of Copepods