これでもミジンコ!? (とっても変わったカイアシ類)

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この子らはカイアシ類(ケンミジンコの仲間)です!!
家内にこの写真みせたら、「根っこ?」って解答。なるほど根っこ系カイアシ類ってとこか!

寄生性のカイアシ類には、寄生生活に適応して、体形がかなり奇怪に変型するものが少なくありません。
ここに示した2種もかなりいっちゃってます。いっちゃったもの同士ですが、これら、所属はかなり遠い分類群です。


●ナガクビムシBrachiella thynni Cuvier, 1830
 カマスサワラの鰓から採集しました。両側の鰓に1個体ずつついていました。写真のものはメスで、普通は小さなオスがくっついているのですが、このメスにはいませんでした。
 カイアシ類は卵からノープリウスとして孵化し、6期のノープリウスを経たのち、コペポディット幼生となり、5期のコペポディットを経て成体となります(↓);
http://blogs.yahoo.co.jp/yevicanidaisuki/GALLERY/show_image_v2.html?id=http://img2.blogs.yahoo.co.jp/ybi/1/4d/30/yevicanidaisuki/folder/1010744/img_1010744_4566552_0?1247240760
 でも、ナガクビムシの所属するシフォノストム目Siphonostomatoida、いわゆるウオジラミ類の生活史はちょっと特異です。カリムス期chalimusという寄生性の幼生期を経ます。
 Lepeophtheirus salmonis(Krøyer, 1838)サケジラミでは、ノープリウス2期が自由生活期で、コペポディット1期で宿主に寄生し、カリムス4期を経て前成虫2期で体表に移動して成体になるそうです(↓);
http://fishparasite.fs.a.u-tokyo.ac.jp/Lepeophtheirus/Lepeophtheirus-salmonis.html
 ナガクビムシについては知見を知りませんが、Salmincola spp.ヤマメナガクビムシでは、卵からコペポディド幼生で孵化し、すぐに魚に寄生してカリムス幼生になり、その後、成虫になるそうです(↓);
http://fishparasite.fs.a.u-tokyo.ac.jp/Salmincola/Salmincola.html


○主な掲載図鑑等;
Shiino [Copepods parasitic on Japanese Fishes, 12], 1956, p.283, figs.8 & 9, hast: Acanthocybium solandri カマスサワラ.
椎野季雄[新日本動物図鑑(中)], 1965, p.501, No.599.
Kabata [Parasitic Copepoda of British fishes], 1979, p.385, figs.1733-1745.


イカリムシLernaea cyprinacea Linnaeus 1746
 2種の両棲類と30種以上の魚類に寄生します。写真の標本は宿主は不明ですが、ブルーギルLepomis macrochirusが卓越する沼で採集されました。
 イカリムシが所属するキクロプス目Cyclopoidaは、狭義のケンミジンコ類で、生活史は浮遊性種と基本的に同じです。ノープリウスからコペポディット5期までは普通のプランクトンなんです。成体になり、魚に寄生するとニュ~っと延びてこういう姿になるんだそうです。

○主な掲載図鑑等;
椎野季雄[原色動物大図鑑(検法, 1961, p.138, pl.69, No.8.
椎野季雄[新日本動物図鑑(中)], 1965, p.500, No.592.
武田正倫[原色甲殻類検索図鑑], 1982, p.249, No.759.

 なお、日本産のイカリムシはLernaea elegans Leigh-Sharpe, 1925という種類ではないかという見解も出されています。





[参考文献]
1)笠原正五郎.1962.寄生橈脚類,イカリムシ(Lernaea cyprinacea L.)の生態と養殖池におけるその被害防除に関する研究.東大水産實験所業績,3:103-196,
2)Nagasawa, K., Inoue, A., Myat, S. & Umino, T. 2007. New host records for Lernaea cyprinacea (Copepoda), a parasite of freshwater fishes, with a checklist of the Lernaeidae in Japan (1915-2007). J. Grad. Sch. Biosp. Sci., Hiroshima Univ., 46:21-33.