マグロエラブタジラミ

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マグロエラブタジラミEuryphorus nordmannii Milne Edwards, 1840です。メスの背面全形ですが、実は生殖節の腹側にオスがしがみついています。交尾前ガードなんですかね?

このカイアシ、ぱないデスよ!
図鑑や文献でこのフォルムみていて、いつか実物みたいなって思っていた甲殻類の1種です。
小三郎Jr.さんから送っていただきました。
南伊勢町で漁獲されたシイラの鰓蓋の裏側にビッシリ寄生していました。
鰓蓋ごと冷凍で送っていただきました(下の写真)。4枚だったので、2尾分ですかね? 大きな鰓蓋だったので、大きなシイラだったのでしょう! どれくらいの魚体だったですか? 漁獲方法はなんでしたか?(定置網?)
しかし、寄生状況は圧巻で、これなんて例えたらいいんですかね? スズナリ?? なんでこんなに大量に寄生するもんなんですか? どこかに本種幼生の高密度の寄生スポットなんかがあって、そこをくぐるのがシイラの成長の登竜門なんですかね?

メスの第1腹節のヘラ状部位、これかなりきてますよね。最近ではこのカイアシの絵をみると、映画マトリクスを連想しています。あるいは天の羽衣の天女さんみたいでしょ? Nob!!だけの感性か?


新日本動物図鑑(中)など、国内の図鑑類ではEuryphorus nympha Steenstrup & Lütken, 1861の学名が使用されていますが、これはE. nordmanniiのシノニムに異動されています(Dojiri & Ho, 2013)。また、シノニムとしてE. coryphaenae Krøyer, 1863の名前もありますが、この種小名は、シイラ属の学名に由来します。
宿主としては、下記の8魚種の記録がありますが(Dojiri & Ho, 2013)、記録としては圧倒的にC. hippurusが多くみられます。
  Coryphaena hippurus シイラ
  Coryphaena equisetis エビスシイラ
  Coryphaena sp.(as Lampugus punctulatus) シイラ
  Neothunnus macropterus キハダマグロ
  Thunnus alaungaビンナガマグロ
  Thunnus obesusメバチマグロ
  Alepisaurus ferox (as Alepisaurus borealis) ミズウオ
  Rachycentron canadumスギ
標準和名は、新日本動物図鑑(中)の「マグロエラブタジラミ」が有効だと思いますが、マグロに特異した寄生虫のようで、まぎらわしいですね。
世界の三大洋の北緯40°から南緯40°の範囲から報告されています。

○掲載図鑑など
Euryphorus nympha として
  Shiino, 1954, p.284, figs.5-6.
  Shiino, 1959, p.20, fig.9.
  Shiino, 1959, p.350.
  椎野季雄[原色動物大図鑑(Ⅳ)], 1961, p.138, pl.69, No.3.
  椎野季雄[新日本動物図鑑(中)], 1965, p.497, No.583.
Euryphorus nymphaとして
  Dojiri & Ho, 2013, p.184, figs.67-71.




<引用文献>
Dojiri, M. & Ho, J.-S. 2013. Systematics of the Caligidae, Copepods Parasitic on Marine Fishes. Crustaceana Monographs Vol. 18. xii+448 pp. Brill Academic Pub.
Shiino, S. M. 1954. Copepods parasitic on Japanese Fishes 4. The family Euryphoridae. Report of the Faculty of Fisheries, Prefectural University of Mie, 1(3): 273-290, 6 figs.
Shiino, S.M. 1959. Revision der auf Goldmakrele, Coryphaena hippurus L., schmarotzenden Caligidenarten. Reports of the Faculty of Fisheries, Prefectural University of Mie, 3(1):1-34, 9 figs., 5 tabs.
Shiino, S. M. 1959. Sammlung der parasitischen Copepoden in der Pr fekturuniversit t von Mie. Report of the Faculty of Fisheries, Prefectural University of Mie, 3(2): 334-374, 17 figs.
椎野季雄.1961.まぐろえらぶたじらみ.In岡田 要・内田清之助・内田 亨監修,原色動物大図鑑(IV).p.138, pl.69, no.3.北隆館,東京.
椎野季雄.1965.まぐろえらぶたじらみ.In岡田 要・内田清之助・内田 亨監修,新日本動物図鑑(中).p.497, No.583.北隆館,東京.

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