ネオカラヌス・クリスタータス(北のカイアシ類)

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 ネオカラヌス・クリスタータスNeocalanus cristatus (Kroyer, 1848) といいます。頭部先端にmedian crestという扁平な隆起部があり特徴的です。
 表層域(水深0-200m)で採集される浮遊性カイアシ類としては、非常に巨大な種類です。
 ただし成体は深部(水深500m以深)にいて、表層で採集されるのはCI期~CV期までです。


 親潮域を代表するプランクトンで、もっとも重要なカイアシ類の1種です。

 なお、親潮は北方から太平洋岸の三陸沖南下し、銚子沖くらいで黒潮にぶつかり進路を東に変えますが、一部は黒潮の下に潜り込み、さらに南下を続けます。この潜り込んだ親潮には当然親潮プランクトンも含まれていて、相模湾の深部から本種の成体が採集されることがあります。
 本種の成長速度から移動速度を計算したところ、親潮の流速にかなりちかい数字になったという報告があります。

 カラヌス科の最大種で、メスで体長8.4~9.3mmに達するそうです(オスは7.4~8.6mm)。体重的には平均18.9mgで、中型種Calanus sinicusの12.6倍、小型種Paracalanus parvusの236.3倍に相当するそうです。

 生涯をかけて表層から深層500m以深までの鉛直移動を行います。海表面にとけ込んだCO2を深部に輸送する役割をになっているよういう研究報告も出されています。



「オオカラミジンコ」という和名が提唱されていますが、使用例をみたことありません。
 学名のカナ読みが一般的のようです。



●主な掲載図鑑等;
佐藤忠勇[浮遊性橈脚類(其一)], 1913, p.5, pl.II, figs.9-11, no.3.
Mori [Pelagic Copepoda from neighboring waters of Japan], 1937, p.15, pl.3, figs.1-4.
Brodsky, 1938, p.147, figs.1-15.
Tanaka [Pelagic copepods of the Izu region, systematic account, I], 1956, p.258.
田中於菟彦[新日本動物図鑑(中)], 1965, p.459, No.428.
山路 勇[日本海プランクトン図鑑], 1966, p.297, pl.94, No.2.
戸田龍樹[日本産海洋プランクトン検索図説], 1997, p.739, pl.67, no.84.





[参考文献]
1)小達和子.1994.東北海域における動物プランクトンの動態と長期変動に関する研究.東北区水産研究所研究報告,56:115-173.
2)Omori, M. 1967. Calanus cristatus and submergence of the Oyasio water. Deep-sea Research, 14: 525-532.