ハナガタムシ

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ハナガタムシAnthosoma crassum (Abildgaard, 1794)です。
 
サメ類の寄生虫です。カイアシ類です。

 学生のころ、初めて図鑑で見てから、その奇抜な造形にすっかり魅せられ、見たくて見たくてたまらなかった寄生虫です。
 図鑑には強大な第2触角が描かれていますが、写真の個体では体内に収納しているようです。
 
やはり、寄生性カイアシ類研究者にもたまらない種類のようで、板鰓類研究会報にも本種のレビューが掲載されています(長澤, 2012)。
 なんでも、サメ類に見られる寄生虫としては、比較的普通種のようです。
 
今回の標本は、“名前の言えないM@陽気なブォルデモート卿”のご厚意で、熊野灘産ネズミザメ(全長2.5mの♀)から得られた標本4個体をお借りいたしました。採集物の一部と言われていたので、もっとついていたようです。(確認したところ、全部で16個体ついていたそうです・驚!)
 
図鑑ではハナガタムシ科として紹介されることが多いようですが(椎野, 1965)、Kabata1979)によってツツウオジラミ科に移されています(長澤・上野, 2012;長澤, 2012)。
 
宿主として、下記の5種のサメ類が記録されていますが(長澤, 2012)、宿主特異性が低いので、調査が進めばさらに多くのサメ類への寄生が確認されると考えられています。

 アオザメIsurusoxyrinchus Rafinesque, 1810・ネズミザメLamna ditropis Hubbs & Follett, 1947ホホジロザメCarcharodon carcharias(Linnaeus, 1758)(ネズミザメ科)、ヨシキリザメPrionace glauca (Linnaeus, 1758)メジロザメ科)、エドアブラザメHeptranchias perlo (Bonnaterre, 1788)カグラザメ科)。

 なお、新日本動物図鑑(椎野, 1965)では宿主はマンボウMola mola (Linnaeus, 1758)と記されています。
 
web情報をググってみると、223サイト!(画像も割とヒットします)
 
なお、本属は本種のみが知られるようです(WoRMS)。
 
 
○主な掲載図鑑など:

椎野季雄[原色動物大図鑑(Ⅳ)], 1961, p.138, pl.69,No.6.

椎野季雄[新日本動物図鑑(中)], 1965, p.498, No.586.
 
 
参考文献]
長澤和也.2012.サメ類に寄生するカイアシ類,ハナガタムシ.板鰓類研究会報, 48: 16-20.
長澤和也・上野大輔.2012.日本産魚類に寄生するツツウオジラミ科,エラノミ科(新称)Hatschekiidaeおよびニセエラノミ科(新称)Pseudohatschekiidaeカイアシ類の目録(1916-2012年). 生物圏科学, 51: 37-59.

Kabata, Z. 1979. Parasitic copepoda of British fishes.The Ray Society, monograph, 152:i-xii, 1-468, 67 textfigs., 2031 figs., BritishMuseum (National History), Cromwell Road., London.

椎野季雄.1965.はながたむし.in岡田 要・内田清之助・内田 亨監修.新日本動物図鑑(中),p.498.北隆館,東京.