netサーフィンしていて、こんなすばらしい論文を発見しました(↓)
ウミガメ類・クジラ類に特有に付着するフジツボ類(オニフジツボ超科)の形態と日本での産出記録
林 亮太 2009
うみがめニュースレター,81:2-18
http://www.umigame.org/J1/katsudou_newsletter.html
(こちらからpdfをダウンロードできます。)
これから精読いたします。
機会があったら、著者の方とお話したいです。
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2011/05/20加筆
拝読しました。大変に魅力的なガイドブックです。
著者自身が書かれていますが、「あったらいいな」などという控えめなものではなく、まさにカメフジツボ類のバイブルであることは間違いありません。
著者の調査により、日本産ウミガメ類、鯨類、ウミヘビ類から12種のフジツボが確認されています。それまでの文献情報からでは6種だったそうです。以下に、その12種を転記させていただきました。
日本産のオニフジツボ超科フジツボ類リスト
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1. カメフジツボChelonibia testudinaria (Linnaeus, 1758)
【宿主・付着部位】日本ではアカウミガメ、アオウミガメから採集記録がある。背甲・腹甲・縁甲板、頭部など、ウミガメの体の硬質部位に付着する。
2. サラフジツボPlatylepas hexastylos (Fabricious, 1798)
【宿主・付着部位】アカウミガメ、アオウミガメ、タイマイから採集記録がある。ウミガメ体表面の硬い部位から柔らかい部位まで全身に見られる。
3. デコフジツボPlatylepas decorata Darwin, 1854
【宿主・付着部位】アオウミガメ・タイマイの皮膚上に付着する。
4. ウミヘビフジツボPlatylepas ophiophilus Lanchester, 1902
【宿主・付着部位】ウミヘビの体表面に付着する。(著者はエラブウミヘビから標本を得ている)
5. ツツフジツボCylindrolepas sinica Ren, 1980
【宿主・付着部位】アオウミガメ・タイマイに多く観察される。首周り・尾周り・腹甲板・縁甲板に見られるが、頭部・背甲・前後肢上には見られない。
6. サカヅキフジツボStomatolepas praegustator Pilsbry, 1910
【宿主・付着部位】アカウミガメ・アオウミガメに見られる。ウミガメの首周りのような柔らかい部位に付着している。
7. フネガタフジツボStomatolepas transversa Nillson-Cantell, 1930
【宿主・付着部位】アオウミガメにのみ見られる。腹甲の溝、また前後肢の鱗板の溝に埋没する。
8. ユノミフジツボStephanolepas muricata Fischer 1886
【宿主・付着部位】アカウミガメ・アオウミガメの前肢正面に深く埋没する。成熟個体にしばしば見られるが、甲長60cm以下の小型個体からの採集記録はない。
9. キリカブフジツボTubicinella cheloniae Monroe & Limpus, 1979
【宿主・付着部位】日本では鹿児島県屋久島に漂着したアカウミガメ背甲に複数個体が穴を開けて付着している例が観察されたほかに採集記録はない。ウミガメの背甲の骨にまで穴を開けて埋没する。
10. オニフジツボCoronula diadema (Linnaeus, 1767)
【宿主・付着部位】ザトウクジラの頭部・胸ビレ・喉に付着する。また、多くの化石記録が知られている。
11. ハイザラフジツボCryptolepas rhachianecti Dall, 1872
【宿主・付着部位】コククジラの背中を覆うように多数付着する。コククジラは海底面のベントスを濾しとって食べるが、必ず右側を下に向けて採餌するため、海底面との摩擦のない左側に多くフジツボが見られる。
12. エボシフジツボXenobalanus globicipitis Steenstrup, 1851
【宿主・付着部位】鯨類の背ビレ・胸ビレ・尾ビレの末端部に一列に並んで付着している。日本ではスナメリ・シャチ・カズハゴンドウ・ミナミハンドウイルカから採集記録がある。世界中の記録をまとめると19種の鯨類から採集されており、世界最大のシロナガスクジラからも記録がある。
癒し系などといわれるウミガメ類やクジラ類、それに着くフジツボには以前から非常に興味がありました。こういった生き物にとてもワクワクさせられます。実際に標本を手にする機会はあまりないでしょうが、この論文によって、カメフジツボ学への理解が少しですが深まったように思いました。