ホントは赤いカニ

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エンコウガニCarcinoplax longimana (De Haan, 1833)です。ちょっと深場に生息するカニ

職場の後輩が拾ってきてくれました。秋田から!!
底曳網の荷捌き場に遺棄されていたそうです(写真のカタチで硬直しています)。
「えっ! それってゴミ?」って思ったアナタ、失礼ですよ。わざわざ採集してきてくれたんです。ありがたいじゃないですかその心根が。


図鑑などによれば:
甲長49mm、甲幅64mm。甲は前後に湾曲し、表面は平滑で光沢があり、甲域の区画はみられない。函館湾から九州にかけての水深30~100mに分布し、細砂泥域に多い。
オスは甲長40~45mm以上になると鉗脚が急速に伸長し、成長したオスでは甲長の5倍の長さになる(写真の標本は甲幅約40mm)。


食用とはならないため、網漁業では厄介物だそうです。突出部が多いですからね。
ぼうずコンニャク氏は試食したようです。たしかに可食部は少ないけど、美味しかったみたいです。また、数が採れるようなので、味噌汁などのダシとする提案をされています:
http://www.zukan-bouz.com/kani/enkougani/enkougani.html

なお、エンコウガニとは、猿侯蟹(猿公蟹かな?)。オスの伸長した鉗脚が、テナガザルを連想させるようです。また「円甲蟹」という説もあるそうです。

本当は赤い色した美しいカニです(図鑑には「深紅色」とあります)。なんでこんな色かって? たぶん遺棄されてから変色したんだと思います。でも、色は変わっちゃいましたが、欠損はほとんどなく、標本としての価値は十分! だって甲殻類は形態が重要ですから。


○掲載図鑑など:
内海富士夫[原色日本海岸動物図鑑], 1956, p.84, pl.42, No.10.
酒井 恒[原色動物大図鑑(Ⅳ)], 1961, p.74, pl.37, No.5.
酒井 恒[新日本動物図鑑(中)], 1965, p.704, No.1310.
武田正倫[学研生物図鑑水生動物], 1981, p.142, 212.
武田正倫[原色甲殻類検索図鑑], 1982, p.195, No.578.
三宅貞祥[原色日本大型甲殻類図鑑(Ⅱ)], 1983, p.145, pl.49, No.2.
馬場敬次[日本陸棚周辺の十脚甲殻類], 1986, p.229 & 315, no.174.