端脚類とクリオネ

クラゲノミ亜目端脚類といえば、クラゲやサルパなどゼラチン質動物プランクトンと共生する海産浮遊性小型甲殻類として知られますが(Harbison et al., 1977;Laval, 1980)、クリオネを背負う一風変わった共生関係(?)の論文が最近発表されています(Havermans et al., 2018)。

 
Nob!!は英語苦手なので、翻訳ソフトなど駆使して、やっと読めたアブストラクトを中心に紹介しますと、概ね次の様な内容でした。(訳の間違い気づいたかたは、是非放置せずにご指摘願います)
 

■南極周辺の海(Antarctic shelf watersthe Polar Frontal Zone)には、クラゲノミ亜目端脚類の生物量が豊富で(Hyperiella属クラゲノミ類の生息密度は0.006-0.010個体/m3)、魚類や海鳥の好餌料となっている。このうちの、Hyperiella dilatate Stebbing, 1888は独特の捕食回避生態として、バックパックのように海中のハダカカメガイ類を背負うことが知られている(McClintock & Jansen, 1990)。 /■Havermans et al.2018)が調査した海域Weddell Seaでは、利用されるハダカカメガイ類はClione limacine antarcticaE.A. Smith, 1902であった。また、近縁種のクラゲノミ類Hyperiella antarcticaにも同様な習性が初めて確認され、利用されるのはSpongiobranchea australis  dOrbigny,1836であった。クラゲノミ類は雌雄に関係なくこの共生が見られた /■背負われるハダカカメガイ類は大きくてもクラゲノミの1/51/2のサイズであった。 /■この論文ではこの生態をtandem formation(あるいはtandem association)と呼ばれ、ハダカカメガイ類はクラゲノミの第6・第7胸脚で抱えられる様子が観察されている。 /■McClintock & Jansen1990)によるRoss Seaでの観察では、Hyperiella dilatate74%がクリオネを背負うと報告しているが、この論文では30地点中わずか4例が確認されるだけであった。 /■捕食回避としてはクリオネが持つ忌避物質β-hydroxy ketoneを利用するらしい。

 
これらの結果から、次の4項目について考察されている。
●クラゲノミ類、カメガイ類、および“背負い共生”の分布パターン
●陸棚水域と外洋域における捕食防止行動の対比に関する仮説
●メリットまたはトレードオフ
●種特異的相互作用そして共進化?
 
この論文では、クラゲノミ科のHyperiella属周辺の近縁関係が、DNA分析(COI)によって解析されていて、Hyperiella dilatateHyperiella antarcticaが姉妹群であることを突き止め、またいくつかのHyperiella属の既報がご同定である可能性が示唆されています。シロウト目ですが、HyperiellaDNA分析で一緒に比較したHyperiaHyperocheThemistoが複数のグループ(クレイドっていうのですか?)にモザイク状に組み込まれている様子がかなり気になりました。
 
【本件書きかけです。精読して後日加筆します。】
 
 
<引用文献>

Havermans, C., Hagen, W., Zeidler, W.,Held, C., & Auel, H., 2019. A survival pack for escaping predation in theopen ocean: amphipod – pteropod associations in the Southern Ocean. MarineBiodiversity, 49(3), 1361–1370. (First Online: 05 September 2018)