暖海性カラヌス類③:ウンディヌラ・ヴルガリス

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 大型のカラヌス科浮遊性カイアシ類、Undinula vulgaris (Dana, 1852)です。
 暖海表層性の種類で、黒潮流域に出現します。駿河湾奥部(三保半島)での周年調査では、20.3~26.8℃になる時期で、確認されています。

 体形は普通のカラヌス体形(フットボール様の左右対称な流線形)ですが(図A・B・E)、メスは前体部後端が強大な棘になり特徴的です(図D)。この棘は左側が分岐して下方に向いた枝をもつ個体もあります。
 オスは第5胸肢左外肢が伸長し、把握器に変型し、内肢を欠きます(図F)。この把握器を通常は折りたたんでいて、あぐらをかいているように見えます。
 また、オス・メスとも第2胸肢外肢第2節外縁に大きな切れ込みがあり(図C)、第5胸肢底節内縁に鋸歯を欠きます。でもここまでの特徴をみなくても本種であることは確認できます。

 体長はメス2.0~2.8mm、オス2.1~2.5mm。
 暖海域の優占種、Calanus sinicus Brodsky, 1965とほぼ同じくらいの大きさですが、本種の方がでっぷりとした印象があります。
http://blogs.yahoo.co.jp/yevicanidaisuki/4566552.html


●主な掲載図鑑等;
Calanus vulgarris:
 丸川久俊[本邦産浮遊生物,伊豆ニ於ケル橈脚類], 1908, p.4, pl.I, figs.16, 17, pl.II, figs.60-62, no.2.
 Mori [Pelagic Copepoda from neighboring waters of Japan], 1937, p.19, pl.5, figs13-14, pl.6, figs.1-3.
 佐藤忠勇[浮遊性橈脚類(其一)], 1913, p.11, pl.III, figs.30-33, no.7.
Undinula vulgarris:
 Tanaka [Pelagic copepods of the Izu region, systematic account, I], 1956, p.265.
 田中於菟彦[新日本動物図鑑(中)], 1965, p.460, No.435.
 山路 勇[日本海プランクトン図鑑], 1966, p.298, pl.95, No.5.
 戸田龍樹[日本産海洋プランクトン検索図説], 1997, p.739, pl.64, no.82.
Calanus orientalis
 丸川久俊[本邦産浮遊生物,伊豆ニ於ケル橈脚類], 1908, p.5, pl.I, figs.18-34, no.3.





[参考文献]
1)伊東 宏・水島 毅・久保田 正.2005.駿河湾三保沖におけるカラヌス目カイアシ類の季節的消長.「海-自然と文化」東海大学紀要海洋学部,3(1):19-32.