暖海性カラヌス類④:ナンノカラヌス・ミノル

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 小型のカラヌス科浮遊性カイアシ類、Nannocalamus minor (Claus, 1863)です。
 体長はメス1.7~2.4mm、オス1.5~2.0mm。先のCosmocalanus darwiniとCanthocalanus pauperの中間くらいのサイズですが、実際プランクトン見てると同試料中に出現していて、サイズがかぶる個体もあり、結構まぎらわしい種類です。特に小型個体はC. pauperとまぎらわしいですが、N. minorは生殖節腹面が直線的なことで区別できます(C. pauperは山形に突出します)。
 暖海域の優占種、Calanus sinicus Brodsky, 1965のCIV期くらいの大きさです。
http://blogs.yahoo.co.jp/yevicanidaisuki/4566552.html

 暖海性の種類で、日本近海では黒潮流域表層に出現します。

 体形は普通のカラヌス体形(フットボール様の左右対称な流線形)です(図A・B)。メスは前体部後端が円く顕著に突出します(体を上から見るとよく分かりますが、この写真では難しいです)。この特徴はオスでもみられますが、メスほどではないように思います。
 オスは第5胸肢左外肢が伸長します(図C)。第5胸肢外肢の第1・第2節外縁末端の棘が発達しますが、特に左外肢の棘が長く特徴的。
 また、オス・メスとも第5胸肢底節内縁に鋸歯を持ちますが(図D)、底節内縁は直線的で、鋸歯もCalanusに比べると非常に小さいです。


●主な掲載図鑑等;
Calanus minor:
 Giesbrecht, 1892, p.33, t.6, figs.3, 16, 33, t.7, figs.6, 22, t.8, figs.1, 9, 19, 30.
 佐藤忠勇[浮遊性橈脚類(其一)], 1913, p.8, p.III, figs.22-23, no.5.
 Mori [Pelagic Copepoda from neighboring waters of Japan], 1937, p.17, pl.5, figs.1-5.
 Tanaka [Pelagic copepods of the Izu region, systematic account, I], 1956, p.258.
 田中於菟彦[新日本動物図鑑(中)], 1965, p.460, No.433.
 山路 勇[日本海プランクトン図鑑], 1966, p.297, pl.94, No.4.
Nannocalanus minor:
 戸田龍樹[日本産海洋プランクトン検索図説], 1997, p.737, pl.64, no.76.