暖海性カラヌス類①:コスモカラヌス・ダーウィニ

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 カラヌス科浮遊性カイアシ類の1種、コスモカラヌス・ダーウィニCosmocalanus darwini (Lubbock, 1860)です。
 種名が、かのチャールズ・ダーウィン(Charles R. Darwin)に献名されています(この経緯はよく知りません)。なお、今年はダーウィン生誕200年にあたるそうです。(別に狙ったわけではないですけども...)

 暖海性のカラヌス類の1種です。お気に入りです。日本近海では黒潮表層域に出現します。
 特にオスが好きです。体形は普通のカラヌス体形(フットボール様の左右対称な流線形)なのですが(図E)、把握器となっている第5胸肢左外肢はとっても巨大化し(図F)、恐ろしく左右比対象です(なんかメカっぽいです)。
 メスも普通にカラヌス体形で(図A)、体長は1.8~2.2mm。オス・メスとも同じ体長範囲ですが、同時に採集されたもの同士では、オスの方がメスよりもちょっと小さい印象があります。

 メスは、後体部の生殖節や第1腹節後縁背面を小棘が縁取るのが分かり易い特徴ですが(図Dの矢印)、この小棘、欠損している個体もよく見掛けます。
 前体部末端がヘラ状に突出し、生殖節を覆うこともありますが、この突出加減もまちまちのようです。写真(図D)では右側(奧の側)のヘラが発達しているようです。
 小棘がなかったりやヘラが未発達のものでも、カラヌス科としてはスンズマリなプロポーションの後体部は特徴的です(図A・D)。
 オス・メスとも胸肢底節前面に棘や棘列があり(図B・C、Cはメスの第3胸肢)、これが、体を横にした時でもよく見れます。棘・棘列が底節前面にある脚は、メスは第1・3・4・5胸肢、オスは第1・3・4胸肢です(図Bの矢印、メスの写真、第1胸肢の棘はよくわかりませんでした)。
 また、オス・メスとも第5胸肢底節内縁に鋸歯を持ちます。

 同所的に出現するNannocalamus minor (Claus, 1863)も、大型個体は本種にちかい大きさとなるのですが、この第3脚の棘はありませんので、識別ポイントとなります。後体部のプロポーションも異なります(この種についてはまたの機会に紹介します)。
暖海域の優占種、Calanus sinicus Brodsky, 1965のCV期くらいの大きさです。
http://blogs.yahoo.co.jp/yevicanidaisuki/4566552.html


●主な掲載図鑑等(属名が何回か変わりました);
Calanus darwini:
 Giesbrecht, 1892, p.91, t.6, fig.5, t.7, fig.29, t.8, fig.37.
 佐藤忠勇[浮遊性橈脚類(其一)], 1913, p.10, pl.III, figs.24-29, no.6.
 Mori [Pelagic Copepoda from neighboring waters of Japan], 1937, p.18, pl.5, figs.6-12.
Undinula darwini:
 Brady, 1883, p.54, pl.XVI, figs.1-4, 6-14.
 Tanaka [Pelagic copepods of the Izu region, systematic account, I], 1956, p.265.
 田中於菟彦[新日本動物図鑑(中)], 1965, p.461, No.436.
 山路 勇[日本海プランクトン図鑑], 1966, p.298, pl.95, No.4.
Cosmocalanus darwini:
 戸田龍樹[日本産海洋プランクトン検索図説], 1997, p.737, pl.63, no.75.