北海道を代表する等脚類２種です。
さすが北の国ですね。
●シオムシTecticeps glaber Gurjanova, 1933
体長1～2 cmの小型甲殻類で、北海道～千島の寒海に分布します。北海道東部浜中湾のウバガイ漁場での調査報告があります。Tecticeps japonicus, Iwasa, 1934はシノニムとされています。
本種は沿岸域に大量に生息し、食用とはなりませんが、かつては肥料、餌料の目的で漁業が行われていました（宇田川, 1996）。戦前から1950年代にかけて、北海道東部太平洋岸の十勝、釧路、根室支庁館内において、小型底曳網で漁獲され、1954年には北海道全体の漁獲量は2万トンを超えていたそうです。当時は漁獲統計に「シオムシ」の欄が設けられていたくらいとのこと。
底生性の甲殻類ですが、遊泳力が強く、夜間に大量に海中に泳ぎだし、場合によっては赤潮状態になるそうです。１９９８年８月中旬に釧路構内で「大発生」があり、その現場にたまたま居合わせた研究者Udagawa先生は、夢中でその様子をビデオに収め、学会で紹介されたことがありましたが、ビデオに収録された「スゲー！ スゲー！」と連呼する撮影者のハイテンションっぷりが凄い印象的でした。あれは何年前だったでしょうか？ 調べて加筆します。
○主な掲載図鑑など：
Tecticeps glaber: 西村［学研生物図鑑水生動物］, 1981, pp.97 & 249.
武田［海辺の生き物：山渓フィールドブックス─, 1994, p. 277, no. 8 .
布村［原色検索日本海岸動物図鑑(II)］, 1995, p. 222, fig. 21-202A.
布村［日本産海洋プランクトン検索図説］, 1997a, p. 1116, no. 14, pl. 8.
Tecticeps japonicas:
岩佐［日本動物図鑑］, 1957, p. 818, fig. 2356.
内海［原色日本海岸動物図鑑］, 1956, p. 55, pl. 27, no. 9.
椎野［新日本動物図鑑(中)］, 1965, p. 547, no. 741.
●オホーツクヘラムシIdotea (Idotea) ochotensis Brandt, 1851
体長45mmに達する大型のヘラムシ類です。体形は細長く、体幅の5倍。第1触角は4節、第2触角は5柄節と13鞭節からなり、腹尾節には2本の完全な縫合腺と1本の側方のみの縫合線があり、腹尾節後端中央が突出します。ヤマトヘラムシIdotea japonicaは本種のシノニムとされています。
本州中部（新潟県、茨城県）以北の、石の下や、ホンダワラ類ほかの海藻間に棲むとされます。Nob!!も北海道で藻場葉上動物として採集したことがありますし、東北太平洋岸のソリネットサンプルとして、多量に採集されているのを見たことがあります。この時はアミを調べる仕事だったので、ほんと見ただけで、データなどは取れませんでした（涙）
○主な掲載図鑑など：
Idotea ochotensis: 内海［原色日本海岸動物図鑑］, 1956, p.54, pl.27, no.2.
岩佐［日本動物図鑑］, 1957, p. 810, fig. 2332.
椎野［新日本動物図鑑(中)］, 1965, p.548, no.742.
布村［原色検索日本海岸動物図鑑(II)］, 1995, p. 216, pl. 81-12.
布村［日本産海洋プランクトン検索図説］, 1997a, p. 1119.-
Idotea japonica ヤマトヘラムシ: 岩佐［日本動物図鑑］, 1957, p. 810, fig. 2331.
西村［学研生物図鑑水生動物］, 1981, pp.97 & 323.
武田［海辺の生き物：山渓フィールドブックス─, 1994, p. 277, no. 5.
[参考文献]
1）宇田川徹．1992．亜寒帯沿岸の等脚目甲殻類オホーツクヘラムシIdothea ochotensis Brandt, 1856．北水研ニュース，44：7．
2）宇田川徹．1996．ウバガイ漁場に棲息する等脚目甲殻類シオムシTecticeps glaber Gurjanova, 1933．北水研ニュース，51：4-5．
3）宇田川徹．1996．冷たい海にすむ等脚目甲殻類．うみうし通信，11：2-3.
4）宇田川徹．2000．「大発生」する等脚目甲殻類シオムシTecticeps glaber：1998年夏の「大発生」以降．北水研ニュース，５８：９－１０．
5）宇田川徹・城野草平・吉田秀嗣．2004．北海道東部太平洋岸浜中湾砂浜域における底棲等脚類シオムシTecticeps glaberの分布と個体群構造．日水誌，70(4)：516-522．
