アサヒガニ

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みなさま! あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
(元旦はずしちゃいました)

ということで、今月の甲殻類はアサヒガニRanina ranina (Linnaeus, 1758)です。初日の出→アサヒ、あいかわらずベタで済みませんm(_ _)m
英名はred frog crab。ズバリって感じですね。

 アサヒガニは体型が縦長のカニで、独特の形態をしています。甲長20 cmに達する大型種です。体色は朝日のような鮮やかな赤色。
インド-西太平洋海域に広く分布し、水深10~55 mの砂底に生息します。漁獲が行われるのは長崎などの南方の地域で、かご網漁や地曳き網などで漁獲されます。
ゾエアzoea 7期とメガロパmegalopa 1期を経て稚ガニとなります。幼生期間は約2ヶ月間と推定され、9~10月に着底します。着底後、漁獲サイズの甲長6.5 cmに達するまでに、稚ガニは約10回の脱皮し、5年間が必要とされています。
市場には海外からの輸入品が多く流通しているようです。

築地などには時折入荷されているようですが、なぜかあまり店頭では見ませんね。
写真の標本は海老名サティーの鮮魚コーナーでたまたま見つけて購入したものです。
例のごとく賞味していませんが、私にとっては貴重なサンプルです。これまで図鑑の記述や写真では分かり難かった形質が一目瞭然でした(笑)

真正のカニ類とは若干違うのではないかという議論がありますが、今の所「短尾類」に所属しています。
ゾエア幼生は、一見してカニ類の形態をしていますが、7期というのはかなり長いですし、細かな形態はアサヒガニ科特有で、他のカニ類のゾエア幼生とはことなっていたりします。ちなみにアサヒガニのゾエア幼生は時折関東地方でもプランクトンとして採集されます。


アサヒガニは、元国立科学博物館の武田正倫先生もお気に入りのようで、折に触れ記事を発表されています。そういえば数年前に科博に行ったとき、お土産コーナーに限定フィギュアが打っていました。
また、最近は皆川恵先生が多くの論文を発表されています。(その多くは英文!! (ToT))


関連サイト
http://www.zukan-bouz.com/kani/asahigani/asahigani.html


●主な掲載図鑑
内海富士夫[原色日本海岸動物図鑑], 1956, p.73, pl.37, No.1.
酒井 恒[原色動物大図鑑(検法, 1961, p.38, pl.19, No.1.
酒井 恒[新日本動物図鑑(中)], 1965, p.657, No.1116.
内海富士夫・西村三郎・鈴木克美[標準原色図鑑全集 16 海岸動物図鑑], 1971, p.104, pl.35, No.1.
武田正倫[学研生物図鑑水生動物], 1981, p.120, 192.
武田正倫[原色甲殻類検索図鑑], 1982, p.91, No.266.
三宅貞祥[原色日本大型甲殻類図鑑(供法, 1983, p.1, pl.1, No.1.
和田恵次[原色検索日本海岸動物図鑑(供法, 1995, p. 382, pl. 101-6.
峯水 亮[海の甲殻類], 2000, p.188.
加藤昌一・奥野淳兒[エビ・カニガイドブック], 2001, p.99.
川本剛志・奥野淳兒[エビ・カニガイドブック2], 2003, p.106.
幼生:村岡・小西[日本産十脚甲殻類幼生の文献目録], 1988, p.125, no.012 [Z1-8].


[参考文献]
1)Minagawa, M. 1990. Complate larval development of the red frog crab Ranina ranina (Crustacea, Decapoda, Raninidae) reared in the laboratory. Nippon Suisan Gakkaishi, 56: 577-589.
2)岡本一利.1997.富士の麓でエビ・カニを増やす:静岡県における最近の栽培漁業研究.うみうし通信,15:8-10.
3)武田正倫.1996.アサヒガニ.In(社)日本水産資源保護協会,日本の希少な野生水生生物に関する基礎資料(III):水産庁委託“希少水生生物保存対策試験事業”.pp.450-454,470-471,pl.7.東京.