灯下のウオノエ

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 以前Kamaka氏から同定依頼を受けたウオノエです。氏の許可が得られましたので、ブログにアップします。

 話を聞いた時点で、「これは種まで落ちないな」と直観したのですが、やはり種類はわかりませんでした。
 というのも、このウオノエはプランクトンとして採集されたもので、その時点で幼体のウオノエなのです。多くの甲殻類で、幼体は近縁種同氏で形態的な違いが不明瞭なので種の同定は困難なのです。

 でも、ウオノエには興味があるし、なによりこの標本には付加価値的な魅力があったのです。


 この標本は「灯火採集」によるサンプルだったのです。

 灯火採集っていうのはザックリと説明しますと、夜間に海面でライトなどを照らして集まってくる生物を採集する調査方法なのですが、プランクトン研究者にとっては、妙に惹かれる調査方法なのです。



 このウオノエは大阪湾での調査で採集されたものだそうです(2000.8.18とあります)。大小5個体が送られてきて、このうちもっとも大きい、体長8.1mmの個体を解剖して形態の観察を行いました。

 ウオノエの幼体についてあまり知識がないので、どこまでがこの種の特徴かは判断できないのですが、Nob!!’sアイによる特徴は以下のようなものでした。

● 第1触角8節。
● 第2触角8節。
● 大顎ヒゲ3節。
● 第1小顎末端に4棘を備える。
● 顎脚3節で、末節に3棘を備える。
● 第1~第3胸脚の指節内縁に顆粒列を備える。第4~第7胸脚ではこれを欠く。
● 第2腹肢内肢内縁に、内肢より僅かに短いこん棒状の交尾針を備える。
● 尾肢は腹尾節末端を大きく越えない。
● 腹尾節後縁は半円型。

 このうち、胸脚の指節の顆粒列は、いっしょに送られてきたマンカ幼体(3.0mm、孵化直後の個体)でもみられ、かなり特徴的な形質のような印象がありました。


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A:頭部,B:第1触角,C:第2触角,D:大顎(刺毛欠損),E:大顎ヒゲ末2節,F:第1小顎,G:第2小顎,H:顎脚,I:第1胸脚,J:第7胸脚,K:第2腹肢,L:尾肢,M:腹尾節




 Netみてたら、同時期に大阪湾で行われた灯火採集による学術報告がありました。魚類がターゲットのようですが、気になるのでいずれ入手したいと思います。


[参考文献]
1)大美博昭・有山啓之・日下部敬之・辻村浩隆.2007.大阪湾南部の石積傾斜護岸において灯火に蝟集した魚類幼稚仔.大阪府水産試験場研究報告,17:9-18.