ウオジラミ The Sea Lice

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ノルドマンウオジラミLepeophtheirus nordmanni (M.-Edwards, 1840)といいます。

マンボウの体表に寄生しています。これを採った時、採集地の焼津では1匹のマンボウからメス11個体とオス4個体、未成熟メス4個体がついていました。
焼津で水揚げされるマンボウには比較的普通に寄生しているそうです。
写真のメスは体長10.2mm、オスは6.1mm


ウオジラミ科カイアシ類は、その名のとおり、魚類に寄生するカイアシ類です。
世界から33属445種が知られていますが、このうちの3/4はCaligus属とLepeophtheirus属に所属する種類だそうです。
広大のhpには、日本産の種類として74種が掲載されています。

http://home.hiroshima-u.ac.jp/fishlab/Dhaku/What's%20copepod/Japan%20copepod/SIPHONOSTOMATOIDA/SIPHONOSTOMATOIDA.htm

ただし、世界中の魚類の僅か16%しかウオジラミは調べられていないので、まだまだ新しい種類がみつかる分野のようです。


偏平で、オタマジャクシのようなシルエットで、可愛らしい2コの眼のような吸盤があって...
かなりのお気に入りです。

Nob!!の収集論文では41種しかリストアップできていないので、まだまだです。


2004年に出版された「Sea Lice of Taiwan」には、日本産の種類も含まれた属の検索表が掲載されています。これを和訳してみると、こんな感じです;

1.体前縁の前葉に1対の吸盤lunulesを備える。・・・2
 -.吸盤lunulesを欠く。・・・7
2.生殖節と腹部は平たく、aliform lateral expansionを備える。・・・Parapetalus
 -.生殖節と腹部は平たくなく、aliform expansionを欠く。・・・3
3. 生殖節は後側角に突起posterolateral prossesを備える。・・・4
 -.生殖節は後側角に突起posterolateral prossesを欠く。・・・5
4. 生殖節の後側角に突起posterolateral prossesは4。・・・Synestius
 -.生殖節の後側角に突起posterolateral prossesは2。・・・Caligodes
5.前体部覆面に叉状突起sternal furcaを持つ。・・・6
 -.叉状突起sternal furcaを欠く。・・・Metacaligus
6.第4脚は発達し、外肢は3節。・・・Caligus
 -.第4脚は未発達か欠き、多くは2節。・・・Pseudocaligus
7.全体部前縁は腹側に折りたたまれる;第2触角は長く、爪accessory clawを備える。・・・Hermilius
 -.全体部前縁は腹側に折りたたまれることなく;第2触角は長くなく、爪accessory clawを欠く。・・・8
8.触角後突起postantennary processを欠く;第4脚の外肢は1節。・・・Mappates
 -.触角後突起postantennary processを持つ;第4脚の外肢は2節以上。・・・9
9. 第4脚の外肢は2節;腹部は矮小。・・・Anuretes
 -.第4脚の外肢は3節;腹部は小さいこともあるが、矮小ではない。・・・Lepeophtheirus


この本も古本屋で見つけたのですが、心の中で「うぉ~」と雄叫びあげながら購入しました(^_^)v
まだ、書棚の肥やしですが(苦笑)、ちゃんと読まないと...

この本をちゃんと読んでいくと、台湾産以外の属の特徴の記述もあるので、日本産の検索表を補完できるようです。(そのうちに)
本検索表未掲載の日本産属:Abasia、Anuretes、Alebion、Alicaligus、Pseudolepeophtheirus


魚類寄生虫なので、養殖魚などに被害をもたらすこともあるそうです。
もちろん天然で宿主を駆逐するようなことはないでしょうが(ウオジラミとの運命共同体だろうから)、アジア圏での海面養殖では11種のウオジラミからの斃死や疾病の害が報告されているそうです。


ウオジラミ類はプランクトンとしても稀に採集されます。
数年前のプランクトン学会で、広大の大塚 攻先生が発表されていました。
Nob!!も学生の頃に採集した経験があります。
宿主から剥離してただよったりしているんですかね?



[参考文献]
1)何 汝諧(Ho, Ju-Shey).2000.ウオジラミ:アジアの海面養殖において注意すべき病害虫.海洋と生物,130:442-447.
2)Ho, J.-S. & Lin, C.-L. 2004. Sea lice of Taiwan. iv+388 pp. The Sueichan Press, Taiwan.
3)Kabata, Z. 1979. Parasitic Copepoda of British fishes. Ray Society, London, 152: i-xii, 1-468.
4)齋藤暢宏.1997.駿河湾マンボウから採集された寄生性カイアシ類2種.伊豆海洋公園通信,8(4):4-6.
5)齋藤暢宏.2004.これってミジンコ? 海のはくぶつかん(東海大学社会教育センターだより),34(2):6-7.