オカダンゴムシ

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 オカダンゴムシArmadillidium vulgare (Latreille, 1804)です。
 漢字で書くと「丘団子虫」かな? 古い文献では「テマリムシ」って呼ばれていました。

 庭先や学校の校庭、神社の境内など、至る所でみられる普通種ですが、実は「外来種」!! 日本には明治時代初期に横浜港に入り(大正期に渡来という説もある)、昭和初期に静岡や長野などで園芸害虫として問題にされはじめたらしいです。どこから日本に持ちこまれたかは不明だとか。


 「都市化」の指標生物にももちいられます。都市化の進んだ地域には、陸産等脚類ではオカダンゴムシしかみられないとか。これに対して自然度の高い環境では、フイリワラジムシMongoloniscus maculatus (Iwamoto, 1943)やセグロコシビロダンゴムシVenezillo dorsalis (Iwamoto, 1943)がみられるそうです。

●主な掲載図鑑
岩佐[日本動物図鑑], 1957, p. 809, fig. 2329 .
椎野[原色動物大図鑑(IV)], 1961, p.125, pl.62, no.1.
椎野[新日本動物図鑑], 1965, p.555, no.772.
武田[原色甲殻類検索図鑑], 1982, p.236, no.705.
布村[日本産土壌動物検索図説], 1991, p.64, figs.193 & 202.
布村[原色検索日本海岸動物図鑑(II)], 1995, p. 232, fig. 21-205J.
布村[日本産土壌動物:分類のための図解検索], 1999, p.595, 613, 623.

 体を丸めて、球形になることができます。
 陸産等脚類研究者のAYさんに聞いたところ、大型の老成個体では、刺激になれていて、球形になってもすぐにほどけてしまい、一度球形になると、ちょっとした刺激くらいでは2度目の球形姿勢にはなりににくいそうです。
 これに対して小さな若い個体では、刺激に敏感で、一度球形姿勢に入ると、なかなかほどけないそうです。

 この球形姿勢、標本では無理なので、生きた状態で球形になっていただいて写真撮影しました。大型個体のほうが撮影しやすいのでかなりねばったのですが、刺激にすぐに熟れてしまい、結局小型個体で撮影しました。
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 オカダンゴムシって子供に大人気で、絵本とかもけっこうあるようです。
 国会図書館の蔵書検索システム(NDL-OPAC)で「ダンゴムシ」で図書検索したところ、34件がヒットしました。
 Web検索(google)では約 232,000 件のヒットでした(*_*)



◇◇◇日本産陸産等脚類について◇◇◇
 オカダンゴムシやワラジムシなど、陸上で生活史を完結するような等脚類(そこまで厳密かどうか知りませんが)を、「陸産等脚類」といいます

 2000年に発表された「日本産等脚目甲殻類目録」には、陸産等脚類(ワラジムシ亜目)140種が集録されています。この目録の公表以後も、毎年何種類もの新種が発表されています。
 これは、元富山市科学博物館館長の布村 昇先生の御尽力よるもので、先生が御研究をはじめられた1980年代以前は、わずか10数種がしられていただけです。
 横浜海運局植物検査課の岩本嘉兵衛氏による研究成果だそうです。
 これからも、人里離れた未開の地で調査を進めれば、新種の発見はまだまだあるそうです。300~400種類はいるのではないかと考えられています。

 図鑑「日本産土壌動物:分類のための図解検索」で126種について検索することが出来ます。



[参考文献]
1)岩本嘉兵衛.1943.日本産陸棲等脚類について.植物及動物,11(12):17-32.
2)布村 昇.1999.ワラジムシ目(等脚目).In青木淳一監修,日本産土壌動物:分類のための図解検索.pp. 569-625.東海大学出版会,東京.
3)布村 昇.1999.日本産陸生等脚目甲殻類(Isopoda)の分類学的位置の変更について.Edaphologia, 62: 81-91.
4)布村 昇.2007.オカダンゴムシは外国から来た生物.In金子信博・鶴崎展巨・布村 昇・長谷川元洋・渡辺弘之.土壌動物学への招待:採集からデータ解析まで.pp.223-224.東海大学出版会,神奈川.
5)大野正男.1985.ダンゴムシ.In(財)日本自然保護協会 編集・監修,指標生物:自然をみるものさし.pp.210-213.思索社,東京.
6)齋藤暢宏・伊谷 行・布村 昇.2000.日本産等脚目甲殻類目録(予報).富山市科学文化センター研報, 23: 11-107.
7)寺田美奈子.1995.ダンゴムシの飼育と観察.In青木淳一・渡辺弘之監修.土の中の生き物:観察と飼育のしかた.pp.96-105.築地書館,東京.