多摩川のテナガエビ類

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 このエビ、テナガエビの仲間ですが、多摩川河口域で採集してきたゾエア幼生が成長したものです(@_@)
 職場でペットとして飼育されていました(お世話をしていたのは主にパートさん達)。
 エビのゾエアを採ることが目的ではなかったのですが... 試料に1匹だけゾエア君がいたので、興味本位で飼育していたら(というか、放任していたら)、意外と強じんないきものでここまで大きくなられました。

 採集データが残っていないのですが、2007年の6月に採ってきたプランクトンです。
 2009年7月6日まで生存し、その間、脱皮成長を繰り返されました。
 積極的に飼育してきたわけではないので、成長速度は良くないかも知れません。

 以前、学会で養殖関係の講演者の方に、業務レベルで行われている甲殻類の種苗生産の生残率について質問したことがあるのですが、
 「種類によってまちまちなのですが、だいたい数%のオーダーです」とのことでした(その時のメモ、未確認。ちょっとあやふやな記憶ですm(__)m)。
 このコはたった一匹で、2年以上も成長しつづけました。生存率100%です。いや~、たくましい!!


 種類を調べてみますと、
 日本産エビ類の分類と生態(112)の検索表によれば、最初に第2歩脚の腕節と長節とを比べて、]喟瓩長いか、等しいか短い、というところから種類の検索がはじまります。
 第2歩脚ってのは、「テナガエビ」の名前の由来にもなっている、長く伸長した鋏脚のことです。
 この写真見ますと、腕節は長節とほぼ等長なので、△悗反覆澆泙后そのまま検索をつづけていくと、ヒラテテナガエビMacrobrachium japonicum (De Haan, 1849)にたどり着きました。

 この検索表には日本産テナガエビ類として13種が掲載されていますが、この論文公表以降も3種のテナガエビ類が国内で発見されています(カスリテナガエビM. lepidactyloides (De Man, 1892)、ウリガーテナガエビM. miyakoense Komai & Fujita, 2005、チュラテナガエビMacrobrachium sp.)。テナガエビ類ってまだまだ未知ないきものなんですね。今年の日本動物分類学会でもさらに新たな種類の発見が報告されていました。
 なお、テナガエビ類15種が、国や都道府県などが発行するRDBレッドデータブック)によって何等かのランクの希少生物の指定を受けています。

 ちなみに関東近傍の河川河口域に分布しているテナガエビ類は次の3種のみです。
テナガエビ Macrobrachium nipponense (De Haan, 1849)
ヒラテテナガエビヤマトテナガエビ) Macrobrachium japonicum (De Haan, 1849)
・ミナミテナガエビ Macrobrachium formosense Bate, 1868



[参考文献]
1)林 健一.2000.日本産エビ類の分類と生態(112):テナガエビ科・テナガエビ亜科 テナガエビ属 コね里叛己,128:240-245.
2)齋藤暢宏.2008.「稀少動物」に指定されている日本産甲殻類.海洋と生物,178:695-706.