オンケア・ヴェヌスタ(ヴェネラ型)

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Oncaea venusta f. venellaという海産浮遊性カイアシ類です。
世界中に分布し、日本近海では暖流域から採集されます。

この体勢、「交尾前ガードprecopulatory mate guarding」といいます。
下のでかい方がメスで、上でしがみついてるのがオスです。
メスは体長0.86~0.94mm、オスは0.62~0.65mm。

この種類では、たまにこういったカップルをみることがあります。

プランクトン試料は、現場でプランクトンネットで採集して、ホルマリンなどで固定して、持ち帰って実験室で検鏡しますので、その過程では網ズレやら固定のショックやら輸送やらと、何度もストレスがかかるでしょうから、実際には多くのオス・メスがこの体制でいるのかも知れません。


ハルパクチクス目で、後尾前ガードの類型化が紹介されています。
把握用に発達した第1触角で、オスが未成熟なメスを捕獲claspingしたまま一緒に行動します。
交尾前ガードは:
・「背方連結」第1触角でメスの頭胸部を背面から捕らえるスタイル
・「腹方連結」メスの第5胸脚(もしくは第4胸脚)を腹面からつかむスタイル
・「後方連結」メスの尾叉またはその先端の刺毛を後方からつかむスタイル
の3タイプに類型化されてます。
ガードする相手は、コペポデッド1期(CI)から成体メスまで様々で、中にはオスを捕獲する例もあるようです。


ヤドカリやカニでもよく研究されています。

● 初夏、ホンヤドカリPagurus filholi (De Man, 1887)のオスは左側の鉗脚(小鉗脚)でメスの入った貝殻を持ち運びます。メスが脱皮するのを待って交尾するのですが、脱皮の際にはエスコートをするらしいです。
● タラバガニParalithodes camtschaticus (Tilesius, 1815)は、水深200 mくらいの海底で、交尾前3日から1週間くらいから、オスとメスが向き合い、オスがメスの鉗脚をはさむ「ハンド・シェイキングhand shaking」と呼ばれる交尾前ガードを行います。
● 干潟によくみられるマメコブシガニPhilyra pisum De Haan, 1841も、オスとメスが前後に重なり合った交尾前ガードを行います。前がメス、後ろがオスです。オスが後ろからメスを「はがいじめ」のように抱きますが、鉗脚は用いず、第2胸脚(第1歩脚)を、メスの鉗脚と第2胸脚との間に入れて、腹側に回した体勢をとります。この状態で1~2週間を過ごした後に交尾にいたります。


交尾前ガードは、繁殖相手の早期の確保と解釈されます。メスの交尾できる期間が非常に短い場合、未成熟なメスを確保し、交尾できるまで待つ戦略です。
十脚類の交尾前ガードの大きな特徴は、配偶様式が交尾のたびに相手をかえる「乱昏promiscuity」であり、通常オスの間の闘争を経てメスを獲得するプロセスがあることです。一般にオスには鉗脚などの武器となる部位がメスよりも大きく、また体もメスより大きいようです。



しかし、ボケボケな写真でスミマセン。何度撮ってもうまくいかない写真ってあるのです。
でもそこであきらめたらそれまでなので、いつか再チャレンジいたします。




[参考文献]
1)朝倉 彰.1990.十脚甲殻類の交尾行動・配偶システムとその進化:とくに交尾前ガードに関する話題を中心に.生物科学,42(4):192-200.
2)朝倉 彰.1998.十脚甲殻類の社会性(1):ペアで見つかる種のオス-メス関係.生物科学,49(4):228-242.
3)嶋永元裕.1998.ソコミジンコ類(ハルパクチクス目)の交尾前ガード.生物科学,50(1):23-29.