(続)中・深層浮遊性ヨコエビ類

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 水深500~800m位から、大型プランクトンネットで曳網したプランクトンサンプルの中には、中・深層浮遊性ヨコエビ類が比較的普通に採集されています。(あっ!海の話です。コレ)
 クラゲノミ類のようなプランクトン性の端脚類です。

 ただ、Nob!!が知るかぎりでは、これらヨコエビ類を掲載した図鑑類は皆無で、種類を調べるのにかなり苦労します。
 日本産のヨコエビ類約320種がIshimaru(1994)にまとめられているのですが、この中には中・深層浮遊性種は11種が含まれるにすぎずません。

 日本近海からは浮遊性ヨコエビ類が11科70種記録されています(偶来腫2種も含まれますが)。日本近海浮遊性ヨコエビ類相の概略については永田(1975)に紹介されています。
http://blogs.yahoo.co.jp/yevicanidaisuki/13132161.html
 彼等はけっしてレアな種類ではなく、普通種です。
 Cyphocaris属の種などは、東北沖のプランクトンサンプルでは、表層域で採集した試料中にもよく出て来ます。幼体がメインで、成体は見たことありませんが。

 眼が発達しているクラゲノミ類(特にオオガシラ類)は、主に表層域に生息するのに対し、中・深層浮遊性ヨコエビ類は主に深部に生息する傾向があるようです。表層域に出現する種類もあるようですが。
 Nob!!が以前調べた時は、クラゲノミ類は水深0~250m層に主に出現し、中・深層浮遊性ヨコエビ類は700m以深で見られました。この時のサンプルは水深1000mまでを調査したものでした。この分布傾向は昼夜による違いは見られませんでした。(オキアミ類では昼と夜とで分布水深が異なる種類がいます)。
 ちなみに、コガシラ類のクラゲノミの分布水深は400m以深でしたが、かなりレアでした。

 中・深層浮遊性ヨコエビ類はさらに深部にまで分布し、最深記録のカイコウオオソコエビHirondellea gigas (Birstein & Vinogradov, 1955) はマリアナ海溝の水深10900mから採集採集されています。この種は体長4 cmほどの大型ヨコエビで、新江ノ島水族館で標本をみることができます。


 ここに示した4種は、比較的普通に見られる中・深層浮遊性ヨコエビ類です。種を調べるのかなり苦労しました(>_<)。




[参考文献]
1)Birstein, A. & Vinogradov, M. E. 1955. Pelagicheskei gammaridy (Aphipoda- Gammaridea) Kurilo-Kamchatskoie vpadiny. Trudy Inst. Okean. Akad. Nauk, SSSR, 12: 210-287. [in Russean]
2)Birstein, A. & Vinogradov, M. E. 1958. Pelagicheskei gammaridy (Aphipoda- Gammaridea) severozapadnoi. Trudy Inst. Okean. Akad. Nauk, SSSR, 27: 219-257. [in Russean]
3)Birstein, A. & Vinogradov, M. E. 1960. Pelagicheskei gammaridy tropicheskoi chasti Tixogo Okeana. Trudy Inst. Okean. Akad. Nauk, SSSR, 34:165-241. [in Russean]
4)Ishimaru, S. 1994. A catalogue of gammaridean and ingolfirellidean Amphipoda recorded from the Vicinity of Japan. Report of the Sado Marine Biological Station, Niigata University, 24: 29-86.
5)永田樹三.1975.端脚類の分類.海洋科学,104(7):31-38.
6)永田樹三.1981.ヨコエビ類の分類に関する最近の動向.海洋と生物,17:408-411.




ps.raba様、先日のTCSでお話されていた「赤い端脚」っての、やっぱ気になります。写真とかあったら見せていただけないでしょうか??