マルネコゼヨコエビ

イメージ 1
マルネコゼヨコエビCyphocaris challengeri Stebbing, 1888です。海産浮遊性のヨコエビで、東北沖の深部のプランクトンサンプル中から、かなり普通に見られます。
ですが、本種の掲載された図鑑を見たことがありません(普通種なのに...)。
 
先日、知人のプランクトン研究者YS女史から、本種に関する興味深い論文をいただきました(Yamada & Ikeda, 2000)。感謝です。あまりに興味深いので、その内容を拾い書きしちゃいます:
 
●本種は太平洋の亜北極域の中・深層で、もっとも多いヨコエビ類。
●北海道の南東部定点で、19975月から19994月にかけて調査されていますが、この間での最高密度は199712月で、1.98個体/m3
●成長段階を調べたところ、メスで12齢、オスで11齢が確認された(これメダマです)。
16齢は幼体で、このうち13齢はメスの育房内で過ごす。
・オスは79齢が未成熟期で、1011齢が成熟期。
・メスでは78齢が未成熟期で、912齢が成熟期。
・成長段階の基準は、
   幼体juvenile:第2次性徴がみられない個体
   オス未成熟期immature male:未発達な突起様のペニスを備える
   オス成熟期mature male:触角にcalceoliと呼ばれる感覚器が生じる
   メス未成熟期immature female:未発達な抱卵葉を備える
   メス成熟期mature female:抱卵葉が発達し、interlocking setaeを生じる
・この齢は第1腹肢の節数でみることができる
   幼体juvenile11節、22節、33節、44節、56節、68
   オス未成熟期immature male710節、812節、914
   オス成熟期mature male1015節、1116
   メス未成熟期immature female710節、812
   メス成熟期mature female914節、1015節、1116節、1217
●メスの抱卵数は2065粒。
 
ところで、本種の和名、いまいちしっくり来ません。機会があったら命名者に由来聞いてみたいと思います。(ヨコエビはほぼみんなネコゼだよね?)
 
 
 
 
 
[引用文献]
1Yamada, Y. & Ikeda, T.  2000.  Development, maturation, brood size and generation length of the mesopelagic amphipod Cyphocaris challengeri (Gammaridea: Lysianassidae) off southwest Hokkaido, Japan.  Marine Biology, 137: 933-942.