ダイオウグソクムシ(大王具足虫)

本日(2008/12/14)、「どうぶつ奇想天外」(TBSテレビ、日曜夜20:00)で、ダイオウグソクムシBathynomus giganteus A. Milne Edwards, 1879が紹介されていました。
これ、世界最大級の等脚類で、「減色甲殻類検索図鑑」(武田, 1982)によれば40cmにおよぶらしいです! Bathynomus属のもととなった種類で、スミソニアン博物館のサイトによれば、この属は16種がしられているようです。



日本にはこれよりは小さいけど、それでも体長15cmを越えるオオグソクムシBathynomus doederleini Ortmann, 1895 という種類が、水深200m前後の海域に生息しています。
イメージ 1

イメージ 2

イメージ 3

水深200mといえば深海の領域ですが、こういった海域で操業する底引き網漁業などでは普通にみられるそうです。Nob!!も数個体の標本を入手しています。
深海の生物ですが、ときたま潮間帯でみつかり、webサイトでそういった記事をみたりしています。ですが、Nob!!はへそまがりなので、「こういうのは深海での漁業で混入されたものを水揚げ後にすてたのでは?」と考えています。しかしながら、1997年の4月から5月にかけて、愛知県幡豆郡吉良町潮間帯や、伊勢湾湾口、伊勢湾内で採集されている4個体について、黒潮の蛇行(八丈島付近の北緯33度で東進)が原因とする見解もあります(塚田ほか, 1998)。
ずいぶん古い番組ですが、大橋巨泉さんがやっていた『ギミア・ぶれいく』(1989年10月10日~1992年9月29日、TBSテレビ、毎週火曜日21:00 - 22:54に放送)の深海生物調査特集で、深海サメを目的に餌入りの罠をしかけたところ、オオグソクムシが群がり、「こういった罠を用いた調査ではオオグソクムシがまっさきにやって来るんですよ」と解説されていました。
オオグソクムシは丈夫な顎脚で海底の死肉に群がる清掃者scavengerで、水難者の死体に群がったり、刺網にかかったサメ類を食害したりもしいます。また、比較的多くの水族館で、深海コーナーの「わき役」的な存在で飼育されているのをよく見かけます。



オオグソクムシもそうですが、巨大な等脚類であるBathynomus属には非常に興味があり、情報をあつめています。学術的には三重大学の関口先生が、永年にわたって調査をしているそうです。
先のダイオウグソクムシも非常に興味があり、「葛西臨海水族園」で展示が開始されたきいたときにはわざわざ見に行ったりしました。まったく動きのない生き物でした(笑)。ここでは「ジャイアント・アイソポッド」という名前で展示されています。最近ではいくつかの水族館で飼育・展示をはじめたようです。
イメージ 4

富山市科学文化センターで標本庫の標本を見させていただいたこともあります。
今日のテレビみたいに、いちどは生きたものをさわってみたいです。

番組中しょこたん中川翔子さん)によって、「キング・キモス」の称号が与えられていました。


千葉県立中央博物館 平成18年度企画展 「驚異の深海生物:未知の深世界をさぐる」(会期:平成18年7月1日 (土) ~ 9月3日 (日))で、1mにもなるという超巨大種Bathynomus propinquus Richardson, 1910にコウテイグソクムシという和名をあたえて展示していましたが、圧巻としかいいようがありませんでした。



なお、富山県福井県から、ジュウイチトゲオオグソクムシBathynomus undecimspinosa Karasawa, Nobuhara & Matsuoka, 1992という化石種が出土しています


実は、Bathynomus属は「オオグソクムシ」と名付けられていますが、グソクムシ科ではなくフナホリムシ科なんです。見た目は違いが分かり難いですが、脚の形に差があるし、口器の形などまったく違います。



参考文献
1)橋本浩史.2000.巨大ワラジムシ登場!.Sea Life News, 東京都葛西臨海水族園,11(1):3.
2)Karasawa, H., Nobuhara, T. & Matsuoka, K. 1992. Fossil and living species of the giant isopod genus Palaega Woodward, 1870 of Japan. Science Report of the Toyohashi Museum of Natural History, 2: 1-12.
3)Karasawa, H., Suzuki, A. & Kato, H. 1995. Bathynomus undecimspinosus (Karasawa, Nobuhara & Matsuoka) (Crustacea, Isopoda) from the Miocene Hidarimatagawa Formation of Southwestern Hokkaido, Japan. Bulletin of the Mizunami Fossil Museum, 22: 121-125.
4)Richardson, H. 1905. A monograph on the isopods of North America. Bulletin of the United States National Museum, 54: I-LIII, 1-727.
5)齋藤暢宏・伊谷 行・布村 昇.2000.日本産等脚目甲殻類目録(予報).富山市科学文化センター研究報告,23:11-107.
6)Sekiguchi, H., Yamaguchi, Y. & Kobayashi, H. 1981. Bathynomus (Isopoda: Cirolanidae) attacking sharks caught in a gill-net. Bulletin of the Faculty of Fisheries, Mie University, 8: 11-17.
7)Sekiguchi, H., Yamaguchi, Y. & Kobayashi, H. 1982. Geographical distribution of scavenging giant isopods bathynomids in the northwestern Pacific. Bulletin of the Japanese Society of Scientific Fisheries, 48(4): 499-504.
8)武田正倫.1982.原色甲殻類検索図鑑.vi+58+284 pp.北隆館.東京.
9)塚田 修・若林郁夫・増田元保.1998.伊勢湾湾口で採集されたイガグリガニ.Cancer,7:13-16.