カクレエビ

イメージ 1

カクレエビ
Conchodytes nipponensis (De Haan, 1844)

netみてると、タイラギから出てくるこのエビについての問い合わせみたいな記事をよく見ます。食材ののなかから異物、それも生き物がでてくるのだから、驚くのも無理ないですが。

テナガエビ科・カクレエビ亜科・カクレエビ属のエビです。
甲長は大型のメスでは10mmを超え、14.3mmという記録があります。雄は甲長5.4~11.7mm。いずれにしても小さいエビです。

ツルンとしていて、まっるっこくて、とってもかわいらしいエビです。
色彩は、小さな赤色と白色の色素胞が全身に散在していて、全体的には薄い黄褐色に見えます。また、成熟したメスでは体内の卵巣がそとからわかります。

カクレエビ属の特徴としては;
1.大顎髭がない。
2.第3顎脚には鞭状部のある長い外紙がある。
3.第2触角鱗片は正常である。発達し、ほぼ円形で、外側末端棘は大きい。
4.口前葉には1対の牙状の突起がある。
5.額角は上下両縁ともに歯がない。肝上棘はある。
6.尾節の末端は截型で、3対の棘がある。側面には通常2対の棘がある。
7.頭胸甲には1本の肝上棘があることがあるが、複数の棘が列生することはない。
8.第3~第5胸脚指節は、後縁か前縁に特別の構造物がある。
9.第3~第5胸脚指節の後縁基部には小さい歯があることが多いが、大きな突起はない。
10.第3~第5胸脚指節の後縁基部にある突起は扁平で、先端は1ツメだったり、2叉だったりする。

日本からはカクレエビ属が3種知られますが、尾節背面に3対の比較的大きな棘があることで、ほかの2種から区別されます。
ちなみにほかの2種とはクロチョカクレエビConchodytes meleagrinae Peters, 1852 とチョウガイカクレエビConchodytes tridacnae Peters, 1852です。

千葉県沖から相模湾遠州灘和歌山県高知県、瀬戸内海、福岡県沖など日本各地から報告され、オーストラリアとフィリピンからも知られています。

水深10~40mに生息するイタヤガイ、タイラギ、ハボウキガイが国内の宿主で、オーストラリアのものはイタヤガイ科のAmusium balloti Bernardiが宿主です。

鳥羽市答志島周辺海域での調査では、タイラギ50個体(殻長230~305mm、平均275.9±17.0mm)から、0~3個体の割合でカクレエビが見つかり、複数個体の場合、雌雄の組み合わせに一定の傾向はみられなかったそうです。

また、雌雄ペアで見つかる場合は、必ず大きい方がメスだそうです。

伊勢湾の鳥羽市答志島周辺海域では高い発見率でしたが、瀬戸内海のタイラギやリシケタイラギ、有明海のリシケタイラギ、八代海のリシケタイラギからは、ほとんどカクレエビは確認されなかったそうです。

天敵のいない環境下(水槽飼育)では、タイラギからだした状態でも40日間は飼育可能で、その間に脱皮やメスの抱卵が確認されています。



●主な掲載図鑑
久保伊津男[原色動物大図鑑(検法, 1961, p.102,pl.51,No.2.
久保伊津男[新日本動物図鑑(中)], 1965, p.621, No.997.
武田正倫[原色甲殻類検索図鑑], 1982, p.33, No.99.
三宅貞祥[原色日本大型甲殻類図鑑(機法, 1982, p.36, pl.13, No.2.
林 健一[日本産エビ類の分類と生態(124)], 海洋と生物, 141, 2002, p.328, figs.436d-f,437,438e-h.


余談ですが、○○カクレエビという和名のエビは結構いるので、「カクレエビ」でweb検索すると余計なサイトをかなり拾うと思います。かといって学名で検索しても、専門的なサイトしかヒットしなかったりして

関連サイト
http://www.zukan-bouz.com/ebi/tenagaebi/kakureebi.html

上の画像は、ぼうずコンニャク氏の画像掲示板に以前upしたものを流用しました(今月の甲殻類:2008年3月)
写真のエビは、オスはぼうずコンニャク氏に、メスはキヌバリ女史にいただきました。ともに築地で入手されたものだそうです。

キヌバリ女史はカクレエビの飼育経験があり、「弱いエビはすぐ死んでしまいますが、元気がよければ数ヶ月は飼育できます。隠れ家を与えるのがコツ」といっていました。もちろん貝なしでの飼育です。
入手先が築地市場なので、搬入までに弱ってしまうのかもしれません。もともとタイラギの販売が目的であり、中のカクレエビは眼中にないでしょうから。
あと貝の殻の中の環境って、貝のえら呼吸によって酸素分圧とかエサの量なんか、海の環境と比べてどうなのでしょうかね? 当然漁獲後のタイラギの殻内の環境は、天然下より悪化でしょうし。




【参考文献】
1)Fujino, T. & Miyake, S. 1967. Two species of pontoniid prawns commensal with bibalves (Crustacea, Decapoda, Palaemonidae). Publ. Seto. Mar. Biol. Lab., 15: 291-296.
2)伏屋玲子・鈴木建吾・前野幸男.2008.タイラギに棲むカクレエビ.Cancer, 17: 13-15.
3)久保伊津男.1937.二枚貝類と共生するカクレエビに就いて.植物と動物,5(3):57-60.
4)Kubo, I. 1940. Studies on Japanese palaemonoid shrimps, II. Pontoniinae. J. Imp. Fish. Inst., Tokyo, 34: 31-75.
5)Suzuki, H. 1971. On some commensal shrimps found in the western region of Sagami Bay. Research on Crustacea, 4, 5: 92-122.
6)Yang, H. J. & Ko, H. S. 2004. Zoeal stages of Conchodytes nipponensis (Decapoda: Palaemonidae) reared in the laboratory. Journal of Crustacean Biology, 24: 110-120.