ウオノエ類の顎脚

ブログ開設して2ヶ月経過。アクセス数は日に20件前後ですが、Nob!!は満足しております。みなさまありがとうございます。これからもボトボチと更新します。

さて、今回はゆめえび様へのオマージュです。


等脚類を勉強しはじめた頃、私も直面した問題ですが....

「原色検索日本海岸動物図鑑(II)」には、ウオノエ類と、他のグループの違いとして、
「全部の胸脚が鎌形で...」という文言があります(p.219・222)

ではこの脚はどうでしょうか?

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オオグソクムシ(スナホリムシ科)の第1胸脚です。
図鑑によれば、これは「鎌形」ではなく「歩行用」なんです... なんで(?)

ウオノエ科とスナホリムシ科、グソクムシ科は、有扇亜目(コツブムシ亜目)というグループに所属していて、体型も何となく似ています。

これらの区別点は:
ウオノエ科・・・・・・胸脚はすべて鎌形
スナホリムシ科・・・・胸脚はすべて歩行用
グソクムシ科・・・・・胸脚は前3対が把握用(鎌形)、後ろ4対が歩行用

でも、上の図のように、「把握用」と「歩行用」って、Nob!!にはすぐには理解できませんでした。


実はもっと明らかに違うところがあるのです。

甲殻類の口は3対の頭部付属肢(大顎、第1小顎、第2小顎)によって覆われていて、等脚類などのフクロエビ類ではさらに数対の胸部付属肢が「顎脚」としてその上を覆います。等脚類では1対の顎脚を持つので、口の周りには4対の付属肢が配置されています。これらの脚を「口器」と一括して呼んでいます。

上記3科の等脚類では、この口器の構造がかなり違います。一番外側をカバーする顎脚も全然違う形をしているので、これを観ただけでもグループ(科)の特定ができるのです。


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「続・アオアジのエ」写真Bより
http://blogs.yahoo.co.jp/yevicanidaisuki/5298412.html

あまりいい写真ではありませんが、顎脚とはこんなところにあります。これをピンセットなどで取り外して顕微鏡で観察します。でも慣れれば、口元の写真があれば、なんとなくわかります。



ちなみに、カニなどの十脚類では顎脚が3対あります。これを、第1~第3顎脚と表現します。

等脚類はフクロエビ上目、十脚類はホンエビ上目に属しますが、これらの所属する軟甲綱は胸部付属肢が8対あります。
等脚類では胸部付属肢の1対目が顎脚に特化しているので、のこりの7対が「胸脚」となり、
十脚類では3対が顎脚なので、のこり5対が「胸脚」です。5対=10本が胸脚なので、十脚類といいます。

このあたりの分類体系の階層構造はわかりにくいと思います。気になる方はこちらのページを参考にしてください↓↓↓
http://blogs.yahoo.co.jp/yevicanidaisuki/4200357.html



脱線しましたが、ウオノエ科とスナホリムシ科、グソクムシ科の顎脚はこんな感じです(↓↓)。もちろん種類によって微細な違い(棘や毛の数とかシルエットとか)はありますが、グループを見分けるには十分すぎる違いでしょ。

でもかなり専門的ですよね。ウオノエの解剖なんて...



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なお、等脚類の分類のトレンドは、最近ちがった分類体系が支持されつつあります。
この体系は馴染みが薄く、まだ勉強中ですが、いずれ体得します。

ちなみに当サイトはMartin & Davis(2001)に従っていますが、これは旧来の分類体系に近いようです。